Episode39 ページ40
Aの嗚咽が神殿に響き渡る。突如、頭の中に今までの無機質な声音とは違う、声が響く。
『アァ…どうして…どうして空は蒼いのか…』
「何…?」
「え…?」
『人は幾千年も問い続けた…原理を教えても問い続ける…私は…思った…≪問い≫とは≪願い≫なのだと…何かに焦がれて、誰かに惹かれて…手にしては喜び、届かずには泣いて…なぜ、どうして、どうすれば…願い続ける事が、進化の道筋なのだ…』
「問い…」
「ねが…い…?」
ルシフェルの言葉は心に直に訴えるようにして響く。まるで、自分たちに向けられているかのように。
『私の問い…は…もう一度あの中庭で…君達と珈琲を…サンダルフォン…A―――――』
それを最後にルシフェルの声が途切れる。
「嘘だ…嘘でしょう…?だって貴方は完璧で、皆を導いて皆に愛されて…その貴方がどうして…!?」
「…いやだ…いやだ…!ルシフェル様!!まだ、かなってない…ようやくここまで来たのに…ッ」
光の粒子となって消えた首は、二人の腕の中にはない。ふと、サンダルフォンの背に光が集まり、やがて強く輝く。
「……その…羽は…」
「俺の背に…貴方の羽は白すぎる…ルシフェル…様―――」
互いに体を寄せ合うようにして崩れ落ちる。サンダルフォンの背にはえた羽が、まるでルシフェルのようで、涙がとまらなかった。
「ヒッグ…ウゥ…」
「…ッ…」
神殿には神々しく輝く羽の光と、二人の天司の嗚咽に包まれていた。だが、しばらくしたのち、Aはゆっくりと立ち上がる。
「ぜってぇゆるさねぇ…」
「A…?」
「アイツらを…殺してやる…!」
殺気に満ち溢れたAの背には、見たこともないほど禍々しい羽根が伸びていた。ルシフェルの司る闇の元素はサンダルフォンに継承されたが、その段階でAのほうにも流れ込んできていた。その元素が暴走し、羽を顕現させる。
「…!?よせ!」
サンダルフォンが伸ばした手はわずかに届かず、カナンの外へと飛び去って行く。
「…俺は」
Aが発ってすぐに、グランたちがサンダルフォンのもとへたどり着く。ルリアはサンダルフォンの羽を見てすべてを察し、その超常現象に言葉を失うほかなかった。
「サ、サンダルフォン…Aは?」
「……」
グランの問いにサンダルフォンは答えず、ずっと考え込んでいた。ふと突然、地震のような揺れが神殿を揺らし、一行を襲うのだった――――。
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作者名:御煉 | 作成日時:2019年3月3日 20時