10〜過去篇〜 ページ10
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重なり合うように倒れる二つの体は、間違いなく数時間前まで共に食卓を囲んだ存在
その身体から流れる赤い液体の量、そして、穴が空いた身体の場所が、彼らが助からない事を伝えていた
動かない二つの身体を見下ろしながら、久しく感じていなかった絶望に支配された
分かっていた筈だった
自分の存在が、どれだけ多くの人々を不幸に陥れるのか
存在そのものが、この世界にとってどれだけ脅威なのか
右手に馴染んでいた硬い感触を、無意識に頭へ向けた
もう、生きる理由なんて無い
彼等を犠牲にしてまで、生き残る理由は無い
「…や…め、ろ」
迷い無く人差し指を引こうとした瞬間、静かな空間を音が震えた
はっと視線を落とせば、微かに開かれた瞼から覗く双眼が見えた
「っ…風間さん…」
膝を落とし、顔を覗き込む
唇から微かに漏れる息は、いつ切れてもおかしくない
そんな状態でも、風間は強い光を帯びてオレを見ていた
「馬鹿な事すんな…、お前は…生きろ」
「……無理だよ」
どうして生きろと言うのだ
もう、楽になりたいのに
力無く項垂れる俺の頬に、風間は震える掌を当てた
微かに伝わる体温
風間は今、生きている
「俺たちの子が、日本に…、守ってやってくれ」
俺の手で、誰が守れると言うのだ
身近にいた二人さえ、救えなかったと言うのに
微かに首を横に振る俺を、彼はじっと見ていた
頬に当たる手に、微かに力が宿り、彼は俺の目を燃えるような目で見つめながらはっきりと言った
「お前はまだ、汚れてなどいない
その手は、沢山の命を救える立派な手だ
全てを諦めるな、否定するな
きっとこれから、多くの幸せが待っているから」
その目の強さに、伝わる想いに
込められた、願いに
俺は、息を呑んで彼を見つめた
ふっと、彼は微笑んだ
死に際とは思えないほど、優しく、穏やかに
それに返すように、俺も笑った
あなたから貰った笑顔で
「…ありがとう、風間さん」
何も返せなかったけど
苦しみしか与えられなかったけど
あなた方から貰えた幸せは、本物だから
滑り落ちる掌
それを咄嗟に掴んで、額に押し当てる
次第に冷たくなる手
変わらぬ自分の体温
憎しみも怒りも悲しみも、全ては今を生きる者のみが味わう感情
それは否定する事は出来ない、変えられない事実
背負っていこう
これから先も
それが、俺の咎だから
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crow - Finalの相葉ちゃんに大興奮！！ 色々な名言が生まれたイイお話でした。 (11月21日 0時) (
レス) @page17 id: 437ea3d9a6 (このIDを非表示/違反報告)
crow - Finalの相葉ちゃんに大興奮 (2023年4月24日 0時) (レス) @page18 id: 437ea3d9a6 (このIDを非表示/違反報告)
エリン(プロフ) - ちぇろさん» ちぇろ様、コメントありがとうございます！一気に読んでいただいたと言う事で、感激です…！番外編の方もどうぞ宜しくお願い致します。 (2021年3月6日 22時) (レス) id: befc5e26fa (このIDを非表示/違反報告)
エリン(プロフ) - 櫻宮さん» 櫻宮様、ここまでお付き合い下さりありがとうございました！櫻宮様のコメントに何度励まされた事か…！ありがとうございました！ (2021年3月6日 22時) (レス) id: befc5e26fa (このIDを非表示/違反報告)
ちぇろ(プロフ) - おすすめに出てきたことをきっかけに読ませていただきました。ここまで一気に読み切り、楽しませていただきました。ありがとうございます。大好きです！番外編も楽しみに読ませていただきます。 (2021年3月3日 17時) (レス) id: 84d56b057b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリン | 作成日時：2020年9月19日 11時
