検索窓
今日:2 hit、昨日:120 hit、合計:69,286 hit

ページ35

『前にも言った気がしますけど、辞めませんよ』


そう、辞めるわけにはいかないのだ。自分には星見の名を、父の名を世界に轟かせるという義務があるのだから。
そう自分にも言い聞かせるように、カーディガンの裾を握りしめる。


対してみかは折れそうにないAの様子にその美しい顔を歪める。
それでも見蕩れてしまいそうな美しさに変わりはなく、『かみさまはこの人を創るときどれだけ時間をかけたんだろう』と一瞬場違いなことさえ考えてしまっていた。


「今おれ、あんたは“あの”天祥院英智にも利用されとるって忠告したったつもりだったんやけど」
『“例えそうだったとしても”のつもりで返答しただけですが、何か』


みかは追撃をやめようとしないが、AもAでここまで来たら引くに引けなかった。
そろそろ春も終わる頃だというのに真冬のような冷たい空気が二人の間に流れる。


「……確かあんた、あの人に惚れ込んどるんやっけ。変わった男の趣味やな。そもそもプロデューサーがひとりのアイドルに傾倒するってどうなん?」
『……それは、』


その通りだ、としか言えなかった。

嫌なことに目の前のこの男は、心が読めるのかと思ってしまうほど“穿たれると辛いところ”を正確に穿ってくる。

誰がどう見ても“星見が十割悪い”と口を揃えて言うような、Aという少女が持ち前の愛嬌で誤魔化して隠してきた部分を的確に暴いてくる。


『なんなんですか、本当に』


もう誤魔化す言葉も完全に奪われたAがようやく紡いだ言葉。それはもはやただの八つ当たりでしかなくなっていた。


『どうして、そんなことばっかり言うんですか』


──知っている。それは自分が不出来だからだ。
そう頭では理解していても、それを受け入れる勇気を持ち合わせていないAは吼える。


『なんでそんなにあたしを辞めさせたいんですか!あたしが貴方に何かしましたか!?あたしが貴方の家族を殺しでもしましたか!?』



怒られたからって逆上して怒鳴るなんて自分はどこまで最低なんだろう。なんてお父さんには程遠いんだろう。
言い終えた瞬間にそんな気持ちが込み上げてきて泣きそうになる。

これを見て目の前の男は嗤うだろうか。それともまた何の感情もこもってないような声で同じ言葉を言うのだろうか。


「は、」
『?』

そんなAの予想に反し聞こえたのは息を呑むような声。

涙の膜の向こう側、影片みかは目を見開いて呟いた。



「なんで、知っとるん?」

・→←七つの子は誰が殺した?



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (215 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
579人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

紅鮭@くじら(プロフ) - 甘風さん» 星見のキャラを気に入っていただけてすっごく嬉しいです〜!ありがとうございます(..›ᴗ‹..) 更新がんばります!! (2022年12月9日 16時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - みるタピさん» コメントありがとうございます!そろそろ更新速度戻す予定なのでこれからもよろしくお願いします!(⑉• •⑉) (2022年12月9日 16時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
甘風 - とっても面白くて好きです!更新頑張ってください!星見ちゃんのキャラが良い...! (2022年12月5日 23時) (レス) @page33 id: e3065dc72d (このIDを非表示/違反報告)
みるタピ(プロフ) - とても楽しんで読ませていただいています!テスト大変だと思いますが頑張ってください! (2022年12月5日 18時) (レス) @page33 id: c5e7b71543 (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - 立花さん» 立花さん、コメントありがとうございます!!正直ギャグには全然自信がないのでそう言っていただけて嬉しいです!笑 更新がんばりますね〜!! (2022年9月30日 21時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:紅鮭 x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年8月28日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。