七つの子は誰が殺した？ ページ34
恐る恐る振り向けば、虹彩異色症の目がAを見下ろしていた。
関西特有のイントネーション故か穏やかな口調にも聞こえるが、例の如くその目は一切笑っていない。
お人形みたいに冷たい人だ、とAは思う。
『なんでもないです、けど』
「なんでもないわけないやろ。資料探してるん？」
渋々頷けば、影片みかはわざとらしく溜め息をついてから扉を開けた。
入れ、とでも言いたいらしい。
「あんた、アイドルが嫌いだからって情報部に迷惑かけていいとでも思っとるん？ありえんわ〜」
『……すみません』
返す言葉もなかった。
自分がさっきしようとした行動は完全に間違っていたし、みかの指摘は完全に正しい。
それでも『それはこの前初対面で嫌味を言ってきたお前にも非はあるでしょ』とAは内心悪態をつく。
「なに？言いたいことがあるんなら言いや」
『何もないですぅ』
探していた資料は思いの外高いところにあった。が、この状況で脚立をお願いするのはAのプライドが許さなかった。
なので、Aは脚に力を込めて垂直跳びでその資料を取る。
「うわ、身体能力高いんやねぇ。そういやプロデューサーになる前は何しとったんやっけ」
『ライブ会場の雑用してましたね。警備員の真似事みたいなやつとか』
「ふーん……」
お前こそ何か言いたげですね、という意味を込めて睨めば、みかはそれに気づいたのか少し思案するような仕草をしてから口を開く。
「警備員の真似事って、あれやろ。あんたがこの前怪我しとったってやつ」
『は！？なんで知ってるんですか！？』
「友達から聞いたんよ。まア要するに人を殴る仕事やろ？」
その悪意しか感じられない物言いにAは開いた口が塞がらなかった。が、みかはそれにも気づかずこちらに背を向けたまま続ける。
「と、この言い方は良くなかったわ。人と物理的に戦う仕事？って言えばいいんかなぁ？何にせよ危ないやろ」
『……私なら大丈夫なんで、気にしないでください』
「ははっ、怪我して気を失ってたくせによく言うわ」
もう耳を塞いでしまいたかった。なんなら資料を置いてこの場から逃げ出したかった。それでも追撃は終わらない。
「その仕事もやけどさ、あんた都合よくESに利用されとるんよ。可哀想になぁ、良いように使われとる」
この人と会ったのはこれで二回目。なのに既にこの人が次どんな言葉を紡ぐか手に取るようにわかった。
「なァ、Aちゃん。いつになったらES辞めるん？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 578人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅鮭@くじら(プロフ) - 甘風さん» 星見のキャラを気に入っていただけてすっごく嬉しいです〜！ありがとうございます(..›ᴗ‹..) 更新がんばります！！ (2022年12月9日 16時) (
レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - みるタピさん» コメントありがとうございます！そろそろ更新速度戻す予定なのでこれからもよろしくお願いします！(⑉• •⑉) (2022年12月9日 16時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
甘風 - とっても面白くて好きです！更新頑張ってください！星見ちゃんのキャラが良い...！ (2022年12月5日 23時) (レス) @page33 id: e3065dc72d (このIDを非表示/違反報告)
みるタピ(プロフ) - とても楽しんで読ませていただいています！テスト大変だと思いますが頑張ってください！ (2022年12月5日 18時) (レス) @page33 id: c5e7b71543 (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - 立花さん» 立花さん、コメントありがとうございます！！正直ギャグには全然自信がないのでそう言っていただけて嬉しいです！笑 更新がんばりますね〜！！ (2022年9月30日 21時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
