手のひらの上でサンバを踊るな【2nd】

with COSMIC PRODUCTION ページ24

『こんにちはお世話になります星見と申します！！！！！』
「最悪日和！！！！！！！」




デジャヴである。

その日、乱凪砂は旧知の仲である巴日和の口癖「悪い日和」に上位互換があることを初めて知った。
それもこれも急に天井から降ってきた女の子のせいである。七種茨は新たな問題児の気配に一瞬視界が霞んだ。



『わっ大きい声。でも予定時間よりまだ早いしセーフですよね？』
「そういう問題なわけねぇだろ……」


衝撃と混乱のあまり素の口調が出てしまった茨は慌てて咳払いをし、いつもの営業スマイルを必死に作る。


「お久しぶりです、星見さん！お元気そうで何よりですな！」
『あ、確かコズプロの……七種茨さん、でしたよね。今日からよろしくお願いします！』


茨の真似をして敬礼ポーズをするAを見て、彼女が先日から引き続いて不機嫌になっていないことに安心する。
……うん、やはり星見Aはあんずと違って扱いやすい女の子に過ぎなさそうだ。


「全く、天井からの登場なんてどうかしてるね！今日ここにいないジュンくんだったら喜ぶかもしれないけど！」


そんな高くて大きな声に驚いて振り向けば、ぷりぷりと怒った様子の青年が。
頬を膨らませているのにちっとも不細工に見えないあたり、本当に顔が整っているのがわかる。


『えっと、はじめまして。今日からプロデューサーとして皆さんのお仕事をお手伝いさせていただきます！』
「……」


天井から降ってきた人間とは思えない口調や身なりの綺麗さに驚いたのか何なのか、青年とその後ろにいるもう一人は驚いたように固まってしまった。


『あの？』
「……うん、嗚呼ごめんね、今理解したから……世の中には人格が複数ある人間もいるって言うものね」
『私の人格はひとつなんですけど』


「冗談だね！」と青年は言ったが、さっきの驚いた表情などはどう見ても本物だった。
Aは頭は決して良くないが、それぐらいは理解できた。


「それはともかく、僕の名前は巴日和！こっちは乱凪砂！とりあえず仮にでも僕達のプロデューサーを名乗るなら今みたいな奇行は即刻やめないと怒るからね」


前半は明るかったが後半はガチトーンだった。

その落差に一抹の恐怖を覚えながらも、同時に紹介された乱凪砂の方を見やる。と、彼もこちらを見ていたようで目が合った。

見ていた、と言っても見蕩れていたとかそう言うわけじゃない。凪砂は初めて合うタイプの人間(奇行種)に目を輝かせていた。

・→←The Phantom of the ES

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す