続 ページ7
彼女は鍾離ほどは長く生きていないが、仙人の種の人物である。かれこれ鍾離とは長い付き合いであり、彼女がたまに帰って来た時に旅の話を聞くのか鍾離の楽しみであった。
そして鍾離は彼女に好意を寄せていた。
「まあ、またすぐに出るし、ちょっと顔を見に来ただけだよ」
「……もう出るのか?」
「うん、今度はスネージナヤの方にも行ってみようかなぁって」
スネージナヤ、公子殿の母国であったか。
そう思い鍾離はタルタリヤの顔を思い出す。
あの男はちょっかいを出すことだけは一流だったな…
そんなことを考えていると心にモヤがかかる。
彼女を取られたくない。彼にも、スネージナヤにも。
「……て……ない」
「ん?」
「行ってほしくない、と言ったら迷惑か?」
「え」
その言葉に彼女は数秒固まる。
その言葉の意図を鍾離の顔から読み取ろうとするが、考えれば考えるほど自分の都合の良い解釈をしてしまって顔が火照ってくる。
「そ、それは鍾離先生、どういう…」
正直に「教えて欲しい」と言葉を紡ぐが焦りで口が不器用になる。
「…お前をずっと傍においておきたいんだ」
鍾離の言葉と優しい微笑みで彼女は全てを理解する。
「鍾離先生、ちか、近い!」
「なんだ、俺の頼みを受け入れてくれないのか」
「受け入れる受け入れない関係ないにしてもこの距離はおかしい!」
「やっと想いを伝えられたんだ……お前も満更ではない顔をしていた。…なれば俺の傍を離れぬように契約で縛ってしまおうか?」
「嫌とかじゃなくて脳が追いついてないの!!」
「ははっ、冗談だ。……さて、お前の気持ちを口から伝えて貰おうか、A?」
「ッーー〜!!!」
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作者名:たろ | 作成日時:2022年9月22日 20時