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phase24 ページ25

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「しばらくはこちらで暮らすことになりそうですね」



ルプスの言葉にAが首をかしげた



「政府の復興政策もまだ始まっていません

 不便だろうし、不安だと思いますが二人で乗り切りましょう

 どんな状況下でも、俺が貴女を護ることは変わりありませんから」



ルプスには確信があった

この()にいるのはそう長くないはずだと

A憑きのあの獅子がこのまま放っとくことはしないと思ったからだ

とりあえず危険を回避するため、このビルから出ずに数日やり過ごす

そのことをAに伝えた



「・・」



『はい』と唇が動く

DPDのホットラインが使えないので、意思疎通はルプスがAの唇の動きを読むことにした

Aは身振り手振りも使うので、言いたいことは何となく伝わる

その一生懸命な姿が、幼子のようで可愛らしい

何度Aに対して可愛らしいと感じたことだろう

とめどなく溢れる想いをルプスは認めるしかなかった

それを知ってか知らずか、Aが無邪気にルプスの袖口を引っ張った



「ん?どうしました?」



つい甘い声で話してしまう

ニコニコしながら、階段を指さすA



「・・・・」



『たんけん』

そう動いた唇

階段を昇って各階の部屋を探りたいらしい

しばらくここで過ごすなら、いろいろ見てみたいと考えたのだろうか

好奇心に満ちた瞳にルプスは頷いた



「お供しますよ」



手を差し伸べゆっくり歩きだす

窓ガラスが割れ荒れた部屋もあったが、方角によっては無傷な部屋もあった

時間をかけて各階を巡り、最後に屋上に向かう



空が澄んでいた

あの厄災の嵐が嘘のように

五年前のこの時はまだニセモノの空ではなかった

なぜ、五年後の現在の空はニセモノになってしまったのだろう

ふとあの怪盗の言葉が頭をよぎる



<ダケド君ハ知ッテイルノカナ?>



盗っ人の戯言(たわごと)

そう思えばいい

思案するルプスが視界から外した一瞬

屋上端の壊れたフェンスに近付いたA

カジノホテル最上階で暮らしていたせいか、高い場所は平気らしい

気づいたルプスが引き留めようとした刹那



「!?」



突然現れた金ちゃんが前脚でAの背中を押し、屋上から落とした



「Aさん!!」



Aの後を金ちゃんも追う

ルプスが見下ろすと、意識を失ったAが金ちゃんの背に乗っていた

ルプスも躊躇なく飛び降りる

金ちゃんからAを取り戻すために





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作者名:姫保 | 作成日時:2021年7月29日 10時

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