巻き込み系後輩 ページ23
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最近、立華のストーキング行為がより酷くなった、気がする。
どこがどう酷くなったのかを説明しろと言われればそこまでなのだが、なんとなく、常にあいつが視界の端にいる気がするのだ。ていうか、実際居る。
たまたま遭遇したとき以来、近所のスーパーでも必ず鉢会わせるし、絡んでくる頻度も増えたし、隣を占領してくることも増えた。
そんな俺の心情を一言で表すなら、まぁ、当たり前に以前と変わらず『 鬱陶しい 』である。
「 なんかさ、Aちゃんと河村が前より一緒に居る気がするんだけど俺だけ? 」
そろそろストーキングversion2.0にも慣れてきた頃。
ふと、隣で同じ資料を覗き込んでいた福良がそんなことを溢した。
やはりあの違和感を抱いていたのは俺だけでは無かったらしい。
「 あ、やっぱ福良さんもそう思いましたよね?二人ともなんかあったの? 」
福良の言葉に便乗するようにして、こちらに背を向けてホワイトボードの字を消していた伊沢が振り向く。
今の会議室には会議中の張り詰めた空気は一切残っておらず、昼下がりの穏やかな光だけが差し込んでいた。
なにかあったの、なんて聞かれたところで、俺に答えられることはなにもない。寧ろその理由については俺も知りたいくらいだ。
あんな予測不可能な人間の心理、到底分かるわけ無いだろうけど。
「 知らないよ。どうせあいつの気まぐれなんじゃない 」
「 ほんと立華のことになると適当っすよね、河村さん 」
「 言うだろ?好きの反対は無関心。僕はあいつに鬱陶しい以外の感情はないよ 」
「 なんて言いながら河村全然追い払わないよね? 」
「 あいつに人間の言葉が通用するとは思えない 」
「 ひでぇ言い草。河村さんにこんなこと言わせるのマジで立華くらいですよ 」
二人は特に深く気に留めた様子もなく、その話題は軽く流れていった。
次の話題も猪の如く「 先輩!!記事終わりましたー!!ごほうび! 」と言って部屋に突進してきた立華が全てかっさらって、俺達はそのまま解散する。
俺はといえば、薄情な二人に置いていかれ、立華と二人きりにされてしまったが。
最悪だ。本当に。
「 はぁ……ご褒美なんかあるわけないだろ。頭お花畑か? 」
「 えー先輩が頭が撫でてくれる妄想を糧に頑張ったのに 」
「 今すぐ著作権侵害で訴えるよ 」
「 まぁ、私は先輩と話せただけでご褒美ですけど! 」
……困るんだ。最近、こいつのペースから抜け出せなくて。
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作者名:朝田 | 作成日時:2021年2月26日 0時