アンハッピーセット ページ19
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「 はぁ……なんでよりにもよってお前なの 」
「 私先輩のハッピーセットなんで!! 」
「 アンハッピーの間違いだろ 」
私たちの上に広がる晴天とは真逆の、今にも雨が降りそうな顔で先輩が重々しくため息を吐く。
そんなときの私ですよ!とガッツポーズをすれば、お前のせいだと一刀両断された。冷たい。
―――実は私たちは今日、忙しい伊沢さん達に変わって、先方と企画の打ち合わせに来ていた。
先輩は私と一緒に行くと知った瞬間「 お前が行けよ 」と福良さんを睨み付けていたが、「 俺その日テレビの撮影あるから無理 」と彼にヒラヒラかわされ、渋々私と一緒にいくことを快諾したらしい。
多分だけど、先輩としても、仕事に私情を挟みたくはなかったのだろう。
あんまり顔には出さないけど、先輩、この仕事大好きだから。
「 ……立華 」
「 はい!! 」
「 言っとくけど、お前が迷子になっても僕は置いていくからな 」
「 あ、それなら安心してください!私、先輩の場所なら匂いで分かるんで! 」
「 キモいから二メートル離れてくれる? 」
私が居てもお構いなしにスタスタと前を歩いていく先輩の背中をついて歩いて、高いビルの前にまでやって来る。
流石は有名な企業だ。真下から見たら、首が痛くなるほどに高い。
本当ならここに水面下で動き回ってくれている人達が居るのだが、今日は軽い打ち合わせだから、中心で回している先輩とサポートの私以外には誰もいない。
勿論、私にとっては役得以外のなにものでもないけど。
唯一心配なのは、私が先輩の前で大失敗を仕出かさないかどうかだけ。
「 すみません。今日ここで打ち合わせをしに来たQuizKnockの河村なんですが 」
「 河村様と立華様ですね。今確認を取りますので、そちらにお掛けになってお待ちください 」
エントランスにある受付でそう言われ、先輩と共に黒い革製のソファーに腰を下ろす。
受付の綺麗なお姉さんに呼ばれるまでをお喋りで埋めようと思ったが、先輩は熱心に今日の内容について確認をしていたので、私は仕方なくエントランスをぐるりと見渡した。
隅々まで綺麗にされたエントランス。社員証を慣れたように機械へかざしてエレベーターに向かう人々。備え付けの自販機でお茶を買う作業服の人。
……もしかしたら、山本に紹介されなければ、私もあんな風にスーツを着て出社していたのかな。
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作者名:朝田 | 作成日時:2021年2月26日 0時