僕の後輩は鬱陶しい【kwmr】 (ページ16)

今日:2 hit、昨日:8 hit、合計:38,090 hit

画面外の夫婦漫才ページ16

□

　一本目の撮影が終わって画角から外れると、早速今回の優勝を飾った伊沢さんはしずくちゃん先輩の元に駆け寄り、自分の勇姿を自慢し始めた。

　なんの躊躇いもなく「俺すごかったでしょ！！」と自分を褒める社長は子どもっぽくも見えたが、それこそが彼の魅力なんだろうな、とも同時に思う。
　遠回しに褒めてと言うんじゃなくて、ドストレートに褒めてとアピールするとことか、突っ走るばかりの彼にピッタリ。

　まぁ、そんな私も、優勝したら先輩にアピールしまくるんだけども！！
　出来ればあのウザがられてる社長とは一緒にしないでほしいね！！

「やっぱりしずくちゃん先輩と伊沢さん、仲良いですよね！夫婦漫才みたい」
「そうだな」
「まるで私たちですね！！」
「お前はまず眼科に行った方がいいんじゃない？」
「ひっど！」

　この後の撮影には参加しない先輩は私の「ひっど！」を宙に残したまま、そそくさと撮影部屋から消えてしまう。
　彼の消えた扉に文句を言っても返事は返ってこない。まぁ、分かってたけどさ。

「 Aちゃんと伊沢って、似てるようでちょっと違うよね」
「え、あんな方と一緒にされるとか心外なんですけど」

　近くに来た途端そんなことを言い出す福良さんにそう返せば、すぐ横でしずくちゃん先輩にウザ絡みしていた伊沢さんから「おい、立華。聞こえてんぞ」と飛んでくる。
　それを当たり前のようにスルーして、私は福良さんに聞き返した。なんでそう思ったのか、と。

「いや、なんかね？ずっと見てたら、二人ともタイプは同じなんだけど、想いの伝え方が違うなって気づいてさ」
「ほう」
「伊沢は馬鹿正直に好き好き言うけど、Aちゃんはその逆で、アピールはするけど、好きとは全然言わないなって」

　彼に言われて、改めて気づく。
　確かに私は先輩が好きで追っかけ回しているが、彼を前にして、好きと直接言葉にしたことは殆どなかった。

「まぁ、私、社長みたいに告白のバーゲンセールみたいなことはしたくないんで」
「まるで俺が薄情な奴みたいに言うのやめてくれる？」
「え、違ったんですか？！？」
「ちげぇよ！！俺は永遠に千佳ちゃん一筋だわ！！！」
「私だって永遠に先輩一筋ですけどぉ？！？」

　近くで「はぁ」と呆れたため息が二つ分聞こえた、騒がしい休憩時間だった。

□