第4話 ページ5
獪岳side
俺が舞柱、神楽坂Aの継子になってから10日程度がたった。
毎日が忙しく、しかし充実していた。
まず朝。早く起きているつもりだが俺が起き、着替え終わる頃にはもう既に女中のさよが朝食を作っている。
それを手伝い、掃除をしてから師範を起こす。
3人で朝食を頂き、片付ける。
その後の掃除や師範の仕事の手伝いはさよに任せ、自分は鍛錬をする。
その休憩がてらさよの遊びに付き合う。
そして師範の手が空けば舞の呼吸を習得するためにご指導をいただく。
指令があれば仕事へ行く。
夜はさよの夕食作りの手伝いをし、3人で食事をとる。
このたった10日間で、俺は凄まじい量の激励と感謝の言葉をもらい、多くのことを学んだ。
朝早く起きただけで、掃除をしただけで、刀を握っただけで褒められ、さよの手伝いをすれば感謝される。
何故こんなにも気にかけて貰えるのかがわからなかった。
そして月が昇った頃から3人で縁側に座り月光浴をする。
この月光浴は特に理由はないらしいがさよが好きらしい。
基本的にテキパキと働いていたり、1人で花札をいじるさよが年相応にA様に甘えるのはこの時間だけだ。
A様の膝に乗り、すやすやと眠り始める。
優しく撫でてもらえるのは年甲斐もなく羨ましいと思う。
俺も昔は先生に撫でてもらった。
嬉しかったし、もっと褒めてもらいたくて頑張った。
だがどうだろう。あの頃の俺はさよのように屋敷の管理の全てを1人で任されるほどの努力をしていただろうか。
間違いなくそれはない。
弟弟子が来てから俺にあまり構わなくなったせんせいを思い出しじわりと涙が浮かぶ。
そんな俺を、師範は優しい声で呼んだ。
「獪岳、こちらへおいで。」
俺は涙を拭き取り、はい、と返事をして師範のそばにたった。
「座りなさい。君は本当に真面目だね。」
当たり前だ。捨てられたくない。
正座をしつつ師範の方を見ると、俺の頭の方に手を伸ばした。
俺は反射的に目を瞑ってしまう。けれどその後に来た感覚は、痛みではなく、優しいものだった。
師範は、俺の髪を優しく撫でていた。
「よしよし。頑張ってるよ、君は。俺が桑島さんのところでお世話になっていた頃は、自分が強くなることしか考えてなかったからね。凄いよ、君は。」
涙が溢れる。理由は分からない。
ただ、止めようと思っても止めることは出来なかった
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廣岡唯 - 面白い続きが観たい… (2021年9月4日 14時) (レス) id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
ナギ(プロフ) - 続き楽しみにしてます!!更新頑張ってください!! (2021年1月11日 22時) (レス) id: e1c8a072d5 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 続きぃ…続きが…読み…た…い…_(:3」∠)_ (2020年6月25日 2時) (レス) id: a576ecff6a (このIDを非表示/違反報告)
ぜろ - こういう感じの作品…求めてました…ありがとうございます! (2020年5月8日 13時) (レス) id: f998f40160 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがり - 尊い・・・尊い・・・素晴らしい。。もう何度読んだか・・続きたのしみにしています! (2020年4月18日 12時) (レス) id: 43beb87d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐藤 | 作成日時:2020年2月11日 13時