【男主】俺は継子を甘やかしたい【獪岳】

第13話 ページ14

獪岳side

師範の泣く姿は、初めて見た。


泣く姿というか、感情を露わにする姿を初めて見た。


今までの生活で、師範はやたらと俺に気を使っているのが分かった。


それが少し気に食わないところもあったが、師範にとって俺が特別で1番なのは分かっていたからなんでもない振りをしていた。


でも今日、何となくその訳がわかった。


師範はおそらく、俺を本当に大切に思っている。


それこそ手離したくないほどに。


明日の任務は俺は内心絶対に行きたくなかった。今も行きたくない。


いくらもう既に十二鬼月が訪れた場所とはいえ、もし鉢合わせたら俺程度の人間は直ぐに殺される。


俺は、死にたくない。


師範に言われずとも命が危なくなったら逃げるつもりだし殺されそうになったら命乞いをするつもりだ。


だが今は、



「この命は俺だけのモンじゃねぇ。」



俺の腕の中でしゃくりあげながら眠る師範を見つめ、静かに呟く。


この男の名誉と立場だってある。


俺が逃げれば、この男が非難される。


俺が命乞いをして鬼にでもなれば、この男が腹を切らされる。


昔の俺だったら、そんなことはどうでもよかったが、今の俺は違う。


この人に迷惑をかけるのだけは嫌だった。


でも、俺が死んで師範が悲しむのは想像するだけでも鳥肌がたつ。


俺は、




どうすればいいのかが分からない。

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