第12話 ページ13
獪岳の脚に自分の足を絡ませる。
「獪岳、許してくれ。君がいなくなるのが何よりも恐ろしい。怖いんだ。師範である俺がこんなことを言うべきではないが、俺は、どんな形であれ獪岳が生きているのであればそれでいい。」
獪岳は、返事をしなかった。
ただ黙って俺の背中に手を回した。
それと同時に、俺の瞳からは涙が溢れた。自然と獪岳の浴衣を強く握る。
「行かないでくれ、十二鬼月はすごく強いんだ。」
最悪の可能性ばかりを想像してしまう。
獪岳を信じていないようでそんな自分が情けない。
「獪岳。お願いだから、お願いだから生きて帰ってきてくれ。」
獪岳。俺は今まで君を幸せにすると言ってこの屋敷に縛り付けていた。
俺は昔からずっと、誰かにとって1番に必要とされたかった。
さよにとっての1番は彼女の母であった。俺ではない。
だから獪岳が来て、いつだって俺の事を一番に考えてくれるものだから。
離れがたくなった。
だから獪岳が俺の元から離れてしまわないようにと、獪岳の願いをこれでもかと言うほど叶えてきた。
あの時、占い師が言った。
「彼は救われる。」
それは俺の事だったのではないかと、常に思う。
俺は、獪岳を失うのが恐ろしい。
それは獪岳のための感情ではない。
自分が恐怖から救われ、欲を満たすための感情なのだ。
そんな自分がおそろしい。
結局その夜は、獪岳は1つも言葉を発することなく気付けば俺は泣き疲れて眠ってしまっていた。
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廣岡唯 - 面白い続きが観たい… (2021年9月4日 14時) (レス) id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
ナギ(プロフ) - 続き楽しみにしてます!!更新頑張ってください!! (2021年1月11日 22時) (レス) id: e1c8a072d5 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 続きぃ…続きが…読み…た…い…_(:3」∠)_ (2020年6月25日 2時) (レス) id: a576ecff6a (このIDを非表示/違反報告)
ぜろ - こういう感じの作品…求めてました…ありがとうございます! (2020年5月8日 13時) (レス) id: f998f40160 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがり - 尊い・・・尊い・・・素晴らしい。。もう何度読んだか・・続きたのしみにしています! (2020年4月18日 12時) (レス) id: 43beb87d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐藤 | 作成日時:2020年2月11日 13時