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ぎゅうと小さい手を繋いでは、大きくなったらレオナさまと結婚すると言って憚らなかった馬鹿な私。ではお前は俺の妹になるのだなと、あの方は笑って下さいました。そうして俺が守ろうと私の頭を撫でて下さいました。
私はその記憶を、宝物か何かのように大切に仕舞い込んでいる。
もう十数年も前の話だ。
私を守ると言ってくださったあの方の隣には今、それはそれはお美しい妃さまが立っている。その逞しい腕には、あの方と同じ髪の色をした可愛らしい男の子が眠っている。
輝かんばかりの幸せを享受なさる兄王さまたち。それを何処か恨めしく見つめるレオナさまの後ろで、あの大きな手を今も忘れられない私は、喉に泥を詰めては何かに封をし続ける。
レオナさまは美しい。
惚れ惚れしてしまうほどの素晴らしい毛並みを持っていらっしゃる、けれど、それは決してあの方と同じ太陽の色ではない。私が本当に欲しかったのは、あの太陽の色でした。あなたが誰よりもなりたかったあの方を、私はあなたに重ねていた。
私は今もずっと、『あの方によく似た』あなたを見つめている。
何も言わない私に、レオナさまが片方の口角をあげる。表情と呼ぶには不格好で、下手くそだ。
「本当に馬鹿だな、A」
私を哀れむように、呆れたように、私の下心全てに気付いていたレオナさまは笑う。その笑い方がやっぱりどこかファレナさまに似て見えたから、私の目はきっとずっと前から可笑しい。
私はファレナ様が好きでした。
Aと私をお呼びになる優しい声が、太陽のように美しい毛並みが、誰かを見つめる綺麗な瞳が、全てが好きだった、それらと酷く似ているあなたが、だけど綺麗じゃないなんて言えやしない。私の瞳を通して見たあなたは、どう見たってファレナさまの虚像だ。
そんなあなたも、私を置いていってしまう。
レオナさまをお迎えに来た真っ黒な馬車。ナイトレイブンカレッジへの入学が認められた証。誇らしいはずのそれが、私にはどうしてもレオナさまを連れていく死神にしか見えない。
「行ってくる」
くしゃり、と頭を撫でられる。
見上げたレオナさまの顔、私の頭を撫でた大きな手があの方のそれと全然似てないから、虚像を抱いて生きてきた愚かな私は、「ぉえ、」詰まった泥を吐き出すように、汚い醜い声で、泣いた。
塗り潰した憧れ
[私の泥で黒く]
2020/11/18 硝子屋
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硝子屋(プロフ) - 食パンさん» リクエストありがとうございます。ゆっくり更新になるとは思いますが、気長にお待ちくださると幸いです。 (7月11日 23時) (レス) id: bfedb6e9a1 (このIDを非表示/違反報告)
食パン(プロフ) - あのぉ趣味でやってるなら申し訳ないのですが厚かましいお願いです。レズで元の世界に彼女もちの監督生夢主と、本気で夢主を墜とすつもりでいるルクハンをお願いしたいです!※夢主は彼女から離れるつもりはないあと夢主は女の子。これからもほどほどに頑張ってください (7月10日 18時) (レス) id: 1be4b3aa35 (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - ハイドさん» 返信遅くなって大変申し訳ありません……!リクありがとうございます、承りました!ただ、私情によりこれから先更新できる頻度が少なくなってしまいますので、気長にお待ちくださると幸いです……。 (2021年2月2日 20時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
ハイド - 初めまして!リクエスト良いですか?キャラに盛る毒を夢主が奪って飲み込んだらをお願いします!キャラはフロイドでお願いします! (2021年1月31日 11時) (レス) id: 76fb91e4e9 (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - ソーダさん» ありがとうございます〜〜!そう言っていただけるのが何より嬉しいです……! (2020年12月24日 18時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:硝子屋 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年3月2日 16時