結納 -1 ページ34
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夕日が斜めに屋敷を刺す。
今日ばかりは門も開かれ、この日のために整えられた庭木のそこここに、紙製の行灯が立てられている。
使用人がその最後の行灯に灯をともし、火種を吹き消した。
門の横に花が提灯を手に立っている。
石畳の道に人影はない。
庭に面した中座敷で、私は父母と並び、正座でそのときを待っている。
私は無意識に、襟元にしのばせたお守りのあたりにそっと触れる。
不思議な護符で、いただいてからかなり経つというのに今もかすかに藤の香りがする。
冨岡様からの文は、さきほど、花が用意した行灯の火種で燃やした。
その灰を庭にまき、私は生家と冨岡様の未来を祈った。
結納ののち、おおよそ二ヶ月で婚礼となる。
婚礼の儀を執り行うころは、真冬だろう。
このあたりには雪が積もるのだろう。
「旦那様」
花が、ふすまをほんの少し開けて、声をかけた。
「漆原家、お越しでございます」
「…分かった」
父が立ち上がり、私と母は背筋を伸ばした。
給仕係が厨へ戻り、最後の支度が始まる。
結納品の取り交わしが終わったら、そのまま食事会となる。
「お頼み申し上げます」と、漆原の当主の声がして、縁側の襖が開かれた。
当主に続いて、敬一郎さん、最後にご母堂が入ってくる。
敬一郎さんは、私の着物を見て、ほんの一瞬、睨むような目をした。
…さあ。
…さようならを。
私は、母に続いて両手の指をつき、ゆっくりと頭を下げた。
下げた鼻先に、ふわりとかすかに藤の花が香った。
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瑞姫(プロフ) - 今吐露2でリアルに泣いております、、思わずよくわからない報告コメント申し訳ないですめちゃくちゃ好きですこの作品 (2020年6月24日 23時) (レス) id: 445b4986a2 (このIDを非表示/違反報告)
pink0223xxx(プロフ) - はじめまして、更新お疲れ様です。素敵な言葉遣いや雰囲気が想像がしやすくてどんどん引き込まれていきました。泣いたり笑ったり楽しかったです。応援してます! (2020年6月3日 21時) (レス) id: 086d84223c (このIDを非表示/違反報告)
おんたま(プロフ) - はじめまして。更新お疲れさまです。完成度が高くすごく素敵な作品だと思います。無理のない範囲で更新頑張ってください。応援しています。 (2020年6月3日 2時) (レス) id: 8f0607afea (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - お返事できてないお三方、コメント返信できてなくてすみません、いつも更新遅くてすみません、読んでくれてありがとうございますloveです (2020年6月2日 19時) (レス) id: 100d291aa9 (このIDを非表示/違反報告)
madoka(プロフ) - 更新お疲れ様です!ずっと待ってました〜っ!!これからも頑張ってください。 (2020年5月24日 21時) (レス) id: f3e815359c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年4月19日 22時