持つべきものは -3 ページ31
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「はい、おしまいです。
…冨岡さん、あなたが何を考えているか、あてましょうか。
Aさんのようなふつうのお嬢さんは、よいお家に嫁いで、大切にされて生涯を過ごしてほしい。
違いますか?」
その丸くて大きな目が、上目遣いで俺をとらえる。
「ですが、鬼を信じず鬼狩りを忌避するような家に、稀血の彼女が嫁いで、…果たして寿命をまっとうできるでしょうか。
ご存じの通り、女は普通に生きていても血を流す機会が多くある。
月経もそうですし、出産も、」
出産、という言葉に、俺がほんの少し反応したことも、胡蝶の目は見逃さない。
「それから、男性は知らない人も多いですが、母乳も血液なんですよ」
胡蝶はあくまでにこやかに続ける。
「…冨岡さん」
「Aさんは、…少なくともAさんは、あの結婚を望んでいません。
ねえ、彼女を攫えるのは誰だと思います?」
胡蝶は、救える、とは言わなかった。
「好きな女ひとり攫えなくて、何が柱かと、思っちゃいますね、私は」
そして、うふふ、と笑った。
攫いに行って、彼女が嫌がるならそれまでじゃないですか。
振られて帰ってきたら、音柱様でも呼んで賑やかに慰めてあげますよ。
「好いている、とか、そういうのでは、ない」
「はいはい。思春期みたいな反応やめてくださいね。
もう大人なんですから」
そして胡蝶は、俺が準備した文を突き返すと、追い払うようなしぐさをした。
「だが、胡蝶。
そうは言っても、あの家の主人、A殿の家族はどうなる?」
「はあ。冨岡さん、あのお家見たでしょう?
たかだか娘の政略結婚ひとつ失敗してどうこうなるような主人に見えました?
豪商、見くびらないほうがよいですよ」
ま、知ったことではありませんが。と胡蝶は言い添えて、今度は本当に扉を閉めていった。
「あ、そうそう」
だが、ほんの少し扉を開けて顔を出すと、言い忘れましたが、と付け加える。
「別に、冨岡さんのためじゃないですよ。
稀血の女性を食った鬼、厄介な敵になりそうだから避けたい、それだけです」
「…不死川と、同じことを言うな」
「うーん…、不名誉、ですね…」
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瑞姫(プロフ) - 今吐露2でリアルに泣いております、、思わずよくわからない報告コメント申し訳ないですめちゃくちゃ好きですこの作品 (2020年6月24日 23時) (レス) id: 445b4986a2 (このIDを非表示/違反報告)
pink0223xxx(プロフ) - はじめまして、更新お疲れ様です。素敵な言葉遣いや雰囲気が想像がしやすくてどんどん引き込まれていきました。泣いたり笑ったり楽しかったです。応援してます! (2020年6月3日 21時) (レス) id: 086d84223c (このIDを非表示/違反報告)
おんたま(プロフ) - はじめまして。更新お疲れさまです。完成度が高くすごく素敵な作品だと思います。無理のない範囲で更新頑張ってください。応援しています。 (2020年6月3日 2時) (レス) id: 8f0607afea (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - お返事できてないお三方、コメント返信できてなくてすみません、いつも更新遅くてすみません、読んでくれてありがとうございますloveです (2020年6月2日 19時) (レス) id: 100d291aa9 (このIDを非表示/違反報告)
madoka(プロフ) - 更新お疲れ様です!ずっと待ってました〜っ!!これからも頑張ってください。 (2020年5月24日 21時) (レス) id: f3e815359c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年4月19日 22時