［完］黒死牟邸に居候してます (ページ41)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:145,049 hit

耳の軟骨ページ41

＊＊＊

『黒死牟さんって、後ろからみた耳がかわいいんですよね』

私は道場の床に転がり、両脚を天井に向けて上げながら言う。
そしてそのまま、足から逆立ちになるように浮いてみる。

「…なんの話だ」

呆れたように応じたのは、今日も今日とて格闘の型の修練に余念のない猗窩座さんだ。

『耳の後ろの、ここの…こう、頭にくっついてるまるいところ』

ここが丸くて、耳の縁が分厚くて、かわいいのよ。
私は逆さまのまま、自分の耳を突いてみせる。
猗窩座さんは、はあ？という顔で拳を下ろした。

『あ、休憩ですか？』

「というか、お前はなぜここにいる」

『黒死牟さん、起きたらいなくて』

「黒死牟殿がいないからといってうちへ来るな」

『ええ～』

逆さに浮いたまま、ふわふわと猗窩座さんに寄っていくと、やめろ鬱陶しい、と猗窩座さんは私の顔をむんずと掴んで、思い切り引いた。
ギャッ、私はバランスを崩して、猗窩座さんに折り重なるようにして落ちる。
尻で猗窩座さんの腹を踏んづけている形だ。
そして、降りろ、と猗窩座さんは言った。
わざわざ下に入ったくせに。
この人は、乱暴者のくせにつくづく女に甘いな、と思う。

『猗窩座さんの耳は固いですね』

私は猗窩座さんに乗ったままよいしょ、と体を反転させ、跨る形で膝をつくと、猗窩座さんの耳を触った。
ぺこぺこと軟骨が指先で折れ曲がっては戻る。

『黒死牟さんの耳はふにゃっとしてる』

「そうか。いいから降りろ」

私はそれを無視して、ぺこぺこと耳を触り続ける。
猗窩座さんは我慢ならないとばかりに私の手首を掴んだ。

「A草、お前、まさか血飲んでいないよな？」

『どうでしょう？』

試してみます？私は以前猗窩座さんに言われたことをなぞるように言って、ぺたりと猗窩座さんのまえ半身に寄りかかる。
猗窩座さんは、ほんのわずかに体を硬くする。
しばらく待っても私が入ってこないのを訝しんだからか、私の顔を覗き込んで、そしてひときわ渋く眉を顰めた。

「…やめろ、そんな目」

『アハ、バレました？』

そして、私の情欲にくゆる視線を遮るように、片手で私の瞼のあたりを覆う。

＊＊＊