［完］黒死牟邸に居候してます (ページ15)

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嘔吐 ① ページ15

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ある日のことだ。
いつものように陽が落ちたのを確認して穴から出て、床下から黒死牟さんの居室へ忍び込むと、
何やらぴりぴりとした気配を察した。
機嫌が悪そうだ。

『おはようございまーす。』

「……ああ。……。」

黒死牟さんから挨拶の返事が返ってくる。
これはおかしい。
何かあったに違いない。

『あのう、何かやっちまいましたかね、私。』

黒死牟さんはそれには答えず、こちらに背を向けたまま、「今日は……、床下から出るな。……A草、いいか。」と言った。

『ええ……、でもォ。つまらない。』

「つまるとか、つまらないとか。
そういう話は……していない。
絶対に、出てくるな。」

黒死牟さんにしては語気が強かったので、私はしょんぼりと頷いた。

＊＊＊

言いつけを守り、床下に戻って土を掘り返し、いつものように穴に潜る。
聞き耳をたてるために、顔の右半分だけ地面から突き出す形で横になり、私は落ち着いた。

しばらくすると、ぞわっとするような感覚に襲われ、奥座敷にものすごく相性の悪い来客が来たことを察した。
なるほど、黒死牟さんはこの厭な感じのする来客と私を会わせまいと考えたのか。
黒死牟さんって、結構私のこと好きよね……。

しかし、気持ち悪いものほど近くに寄って見たくなるのと同じで、私は全身を耳にして来客と黒死牟さんの会話を探った。

「やあやあ、悪いねえ！
無理言って遊びに来てしまって！」

「……用件は、何だ。」

なんというか、玉壺みたいな見た目がキモいがゆえの生理的嫌悪というより、ふつうに人間性が(鬼なんですけどね)受け付けないような感じ。
長いこと鬼をやっている者の中にはけっこう多いタイプだ。
だから私はあまり鬼と関わるのが好きではないのだけど。