9話 ページ9
「鬼は陽が落ちるとああして出てきては、人を食うのだ!
俺たちは夜毎、あれの頸を落として周っている!」
『杏寿郎さん、』
「今までなんら説明もせず、突然のことで驚かれたことだろう!」
『杏寿郎さん、あの。大丈夫ですから、歩けますから……。』
「ダメだ!怪我をしているだろう!」
屋敷までの残りの道を、私は杏寿郎さんに抱えられて戻っている。
人通りがないからまだいいものの。
色々なことが一度におこりすぎていて、心臓が口からまろび出そうだ。
「頼む!せめての罪滅ぼしだと思ってくれ!」
『……はい……。』
***
杏寿郎さんは、玄関先で私を下ろすと、私の肩のあたりに滲む血を羽織で拭った。
気づいていなかったが、爪か何かでかかれたようだ。
『傷が残らないよう、この軟膏を使うといい。
すまないが、今夜は警邏だ!
すぐに出なければならない!
違反になるが、烏を置いていこう!
何あれば烏をそのまま飛ばしてくれ!
烏は俺のところにまっすぐ来る!』
杏寿郎さんは、いやに早口で言った。
「他に何か、懸案事項はあるか!」
『あの、杏寿郎さん、
甘露寺さん、って、どなたでしょうか。』
私は何を血迷ったのか、そんなことを口走ってしまう。
色々と聞かなければならないことや話さなければならないことが多すぎて、
散らかってしまっている。
「か、甘露寺?」
杏寿郎さんは、さすがに面食らって目を丸くする。
「は!……なるほど、先日の文の差出人の名前か!
甘露寺は弟子だ!
煉獄の家で、父上とともに稽古をつけている!
詳しい話は明日、ここに戻るのでそこで話そう!
A殿がよければ、後日煉獄の家で改めて紹介する!」
杏寿郎さんは、早口のまま答えた。
「もし、何か心配をかけていたのなら、謝罪しよう!
……俺たちは、今までまともに話をしてこなかった!
その点について、母上にもやんわりと叱責されている!」
そして、深く息を吸ってから、ようやく落ち着いた口調で、「明日は朝かならず戻るから、今日は休んで、待っていてほしい。」と言うと、私の血のついた羽織のまま、風のように消えていった。
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やも - 冨岡夢の作品を読んでこちらも拝見させてもらいました。やっぱり文章が綺麗に洗練されていてとても好きです!素敵な作品ありがとうございました。 (2020年5月7日 14時) (レス) id: be623916d5 (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - Rさんさん» コメントありがとうございます〜!変な文章どころかありがたい文章です…今のところ続きは書いてなうのですが、書くことがあればこの小説にリンクでも貼ろうかなと思ってます! (2020年4月15日 21時) (レス) id: 218c4f48c9 (このIDを非表示/違反報告)
Rさん - 完結おめでとうございます!コメントするの初めてなのですが変な文章になってないでしょうか?とても感動しました!続きなどあれば是非教えて下さい!素敵な時間ありがとうございました (2020年4月15日 14時) (レス) id: f96fb724ca (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - 炎さん» 一気読みできるテンポを狙って書いていたので、コメントうれしいです、励みになります!読んでいただいてありがとうございました! (2020年3月30日 15時) (レス) id: f96b77b227 (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - ss好きの923chanさん» ありがとうございますー!読んでいただけて嬉しいです。また思いつけば短編でも書こうかなとは思ってます! (2020年3月30日 15時) (レス) id: f96b77b227 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年3月27日 23時