恋だとか愛だとか【エース・トラッポラ】

第１５話 ページ15

「…あの、一つ聞いてもいいですか？」

「なぁに？質問してくるなんて珍しいじゃん」


バイト休憩中フロイドと一緒だった。互いに話しかけることもなく30分は無言だった。スマホと睨めっこしていたフロイドがこっちに視線を送ってきた。


「もし監督生がフロイド先輩に告白してきたら付き合いますか？」

「そんなの付き合うに決まってんじゃん」


なんの迷いもなく即答で告白してくるんだったら受け入れるフロイドにAは理解が出来ない。


「前に付き合いたいと思ってないって言ってましたよね？なのに付き合うんですか？」

「自分からはいかねえけど、小エビちゃんからくるっていうだったら付き合うしかなくね？」

「好きでもないのに？」

「嫌いじゃないからね。難しく考えすぎじゃね？」


フロイドはテーブルに腕を置き、じーっとこっちを見つめてくる。


「逆になんでお前はカニちゃんと付き合わねえの？そっちの方が謎なんだけど。別に嫌いじゃなければ付き合って良くね？」

「好きでもないのに相手に失礼でしょう」

「付き合ってから好きになることだってあるじゃん。だから付き合ってみれば？」

「聞く相手間違えました。フロイド先輩って人魚でしたもんね。人間と感性が違うのは当たり前ですね」

「は？お前から聞いて来たくせにその言い草はムカつくな？」


瞳孔をかっぴらいてさっきより声のトーンが低くなっていた。フロイドの機嫌が上がろうが下がろうが全く表情を変えない。こいつ機械かよと心の中にフロイドは留めた。


「お前よりもオレの方が人間味あるだろ」

「確かに、そうかもしれないですね。一応自分でも特殊な方だと思っているので」

「自覚済みかよ」

「俺だって好きでこんな風になっているわけじゃないんですよ」


一瞬だけ、切なさそうな目をしているような気がしてフロイドは目を見開いた。

ドアが開いて「フロイド、休憩中申し訳ないのですが緊急事態が発生しました。至急VIPルームに来てください」とジェイドに呼ばれた。

彼を残してフロイドは休憩室を後にした。

第１６話→←第１４話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す