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「だから、阿良々木さん。僕は__だからね、たまたま階段で足を滑らせて、たまたまそれを受け止めてくれたクラスメイトが、たまたま春休みに吸血鬼に襲われていて、たまたまそれを救ってくれた人が、たまたまクラスの委員長にも関わっていて__そして更に、たまたま僕の力になってくれるだなんて、そんな楽天的な風には、どうしたって、ちっとも思えないの」


言って__

相川は、カーディガンを脱ぎ始めた。


「折角着たのに、なんで脱ぐんだよ」

「髪を乾かすのを忘れていたや」

「お前、ひょっとしてただの馬鹿なんじゃないの?」

「失礼なことを言わないでくれるかな? 僕が傷ついたら大変じゃないの」


ドライヤーはやたら高そうなものだった。

身だしなみには気を遣う方らしい。

そういう目で見れば、確かに、今相川が着用している下着も、結構お洒落なそれであるようだったが、しかし、なんだか、昨日まであれほど意識していた羞恥の対象が、今となってはもうただの布きれにしか見えない。なんだかものすごい心の傷を現在進行形で植えつけられている気がする。


「楽天的ねえ」

「そうじゃなくて?」

「かもしんない。でも、いいんじゃないの?」


私は言った。


「別に、楽天的でも」

「…………」

「悪いことをしているわけじゃないし、ズルしているわけでもないんだから、堂々としてればいいんだよ。今みたいに」

「今みたいに?」


きょとんとする相川。

自分の器のでかさを気付いていないご様子だ。


「悪いことを__しているわけじゃない、か」

「でしょ?」

「まあ、そうだね」


相川は、しかし、そう言ったあとで、


「でも」


と、続けた。


「でも__ズルはしているかも」

「え?」

「なんでもないよ」


髪を乾かし終え、ドライヤーを仕舞い、相川は、再び、着衣を開始する。濡れっぱなしの髪で着た所為で、湿ってしまったシャツとカーディガンはハンガーに干して、別の服を箪笥の中から探していた。


「今度生まれ変わるなら」


相川は言う。


「僕は、クルル曹長になりたいな」

「…………」


脈絡がない上に、もう半分くらいなっているような気もするが……。


「言いたいことはわかるよ。脈絡がない上に僕にはなれっこないっていうんでしょう」

「まあ、半分くらいはそんな感じ」

「やっぱりね」

「……せめてドロロ兵長くらいのことは言えないの」

「トラウマスイッチという言葉は、僕にとってはあまりにもリアル過ぎるんだよ」

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がむしろ(プロフ) - コメント失礼します!とても面白く、原作の化物語の通りに書かれていて、読んでいてとても楽しかったです! (2022年4月13日 23時) (レス) @page1 id: b2402acd1c (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - ヒマリンさん» ヒマリンさんコメントありがとうございます!わざわざこの作品を見つけてくださり、そう言ってもらえて恐悦至極です!これからも原作通りに進められるよう頑張ります!! (2021年8月3日 19時) (レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
ヒマリン - 本当に化物語の通りでした。 すごいです。 (2021年1月7日 10時) (レス) id: 88fe224ab8 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - うたねこさん» うたねこさん初めまして、感想ありがとうございます!どちらも好きな方がいらっしゃるとは…!? 緩やかですが楽しみにしていただけているのなら光栄です(*'∀`*) (2020年3月22日 22時) (レス) id: 06fe930ba8 (このIDを非表示/違反報告)
うたねこ(プロフ) - はじめまして!物語シリーズもまふさんも好きなのでめっちゃ嬉しいです。お話もこれからすごく楽しみです! (2020年3月22日 17時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:灰猫 | 作成日時:2020年3月20日 4時

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