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案の定、信ちゃんから貰ったズボンは自分とサイズが合わなかった。
従業員室から信ちゃんにサイズが合わへん!と叫ぶと
「上は無理やり着て下はタオル巻いてこい」と返された。
寒すぎるやん。
素足恥ずかしいやん。
信ちゃんに言われた通りの格好して出ていく。
「なにをそんなモジモジしとんねん。漏らしたんか」
「漏らしてへんわ!タオルちっちゃいねんもん!足丸見えやんか……」
「エエやん、別に。たつの足つるつるで綺麗やねんから」
「ほんまデリカシーない……」
ちゃんと隠れてるかタオル持ってまたモジモジしてまう俺に信ちゃんは優しく頭を撫でた。
弟に向けるようなあったかい視線を向けられて思わず俯く。
信ちゃんって愛情表現がストレートやから凄く照れる。
「たつ、今夜は休もか」
「でもシフト」
「今日はもう店閉めることにするわ」
「え!そんな悪いって…」
「アホ、今のお前1人で帰らせたらそのまま死んでまいそうやもん。俺が送ってくから」
「信ちゃん、泊まってくん?」
「悪い?」
「いや……ありがと」
素直に礼をいうと信ちゃんは少し驚いた顔をした。
それからまた微笑んで頭を撫でてくれる。
……誰かと体を重ねないで過ごす夜なんていつぶりやろう。
今夜はただ、何もせずに人の体温を感じながら眠れるんや。
そう思ったら何故か泣きたくなった。
誰かと体を重ねることを嫌やと思ったことは1度もないのに、重ねずに誰かと一緒におれると思ったら安心出来た。
「ほな、車乗るで」
信ちゃんは器用にくるくると指先で車の鍵を回した。
外はいつの間にか雨は止んでいた。
だけど、店内に置かれたままの1本のビニール傘が心残り。
あれはすばる君のものとちゃうん?
……すばる君はあの傘を置いてって、濡れずに帰れたんやろうか。
信ちゃんの車の助手席に乗りながら、そんなことを考えていると
「はよ案内せんか!」って頭を小突かれた。
信ちゃんの車は信ちゃんの匂いがした。
タバコの匂いでもなく、香水の匂いでもない、その人自身の匂い。
それは時に人を安心させ、切なくさせる。
「そこ左に曲がって直進した所」
あいよ、って返事して信ちゃんは車をカーブさせた。
水溜まりの水を跳ねた音がする。
まだ6時なのにこんなに暗い。
冬が近づいてきてる。
……卒業が、近づいてきてる。
まだまだ先にあったはずの卒業がすぐそこまで来ている、時の流れに俺は流されていくんや、って思った。
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れいんと。(プロフ) - ヒイM45さん» はじめまして。私も一生、赤緑が担当です。赤緑作品は新作が少なく、更新が途絶えてるものが多いので寂しいですよね😢いつか甘々な赤緑を書きたいと思っています。 (2022年3月27日 8時) (レス) id: e2762dc7c7 (このIDを非表示/違反報告)
ヒイM45(プロフ) - はじめまして。いつも更新を心待ちにしていた未練タラタラ赤緑強火です。素敵な作品をどうもありがとうございます。完結してしまった喪失感はありますが、また是非是非!貴重な赤緑作品をお願い致します🥺赤緑バンザイ!!そして橙緑も楽しませて頂きます♪ (2022年3月26日 22時) (レス) @page43 id: 0c2aba4953 (このIDを非表示/違反報告)
れいんと。(プロフ) - 羽世さん» ありがとうございます!私も強火すば倉担なんですけど、最近はすば倉担そのものが少なくなってる気がしてるんです〜😭ふっふっふ、ちょっとお待ちくだされ。 (2022年2月19日 16時) (レス) id: e2762dc7c7 (このIDを非表示/違反報告)
羽世 - んんん!最高です……。すば倉担なのですば倉の新作があって嬉しいです😢 次話からtornの予感もして楽しみです。更新待ってます!! (2022年2月19日 16時) (レス) id: 5dae2b6d43 (このIDを非表示/違反報告)
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