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「嘘、」

それは反芻の意味でもあったし、自分の中の小さな叫び声でもあった。

そんなことってある?
やってチーフ、俺が『丸山さんのこと好きやのに可哀想』って言ったから怒ったんちゃうん。

その俺の言葉が核心をついてたから、図星やったからあんなに怒ったんやろ?
……なのに、丸山さんのこと好きちゃうって……そしたら何で怒ったん?

幾つもの疑問符が沸いてグルグルと頭の中を占拠した。
あたりまえやけどそんなことは俺がいくら時間を費やして考えても結論に至るわけもなく。

チーフの説明を聞くより他ないのに……チーフはさっきから一言も発さない。
まるで、伝えたいことはもう全て伝え切ったような態度。

俺はなんとなく声が出なくて、チーフの上下する喉仏をぼんやり見るだけ。
ごくり、と最後に大きく喉仏が動くとチーフは紙コップを捨てて休憩室のドアに手を掛けた。

……え?


「チーフ、あの」

「何。」


それは冷たくもあり温かくもある不思議な声色やった。
チーフの綺麗な茶色の瞳に鼓動が高鳴る。


「さっきの言葉の意味……説明してください」

「やから、そのまんま。俺は別にマルのこと恋人にしたいとか思ってへん」

「やったら何であの時怒ったんですか」


チーフは鬱陶しそうに俺から目を逸らし、壁掛けの時計を見上げた。

「もう10分も休憩してる。そろそろ仕事に戻らんと」

あぁ、もう話を切り上げようとしてる。
こうなったら別角度からいくしかない。


「日本酒の広告はどうなるんですか?……僕はチーフと担当を続けたいです」

「あー……うん、それはそうしとくから」


ガチャリ、とドアノブが下がる。
これを逃したらもう聞くチャンスはない気がした。
チーフの手首を掴む。

驚いたように振り向いたチーフの目を射抜くように見つめて。

「今夜 会議室で待ってます」

チーフは返事なんてせずにパタリとドアを閉めた。
……チーフは来てくれる。

返事を返してくれなくても、チーフは案外責任感強いから来てくれる。
根拠なんてほぼないようなモンやけどそう強く信じれるのはきっと。




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れいんと。(プロフ) - つらきさん» コメントありがとうございます!更新速度が遅くて申し訳ない…。んー、どうでしょ。その辺りにも触れていきたいと思っています笑 (2021年10月3日 9時) (レス) id: e2762dc7c7 (このIDを非表示/違反報告)
つらき(プロフ) - 大量更新ありがとうございます〜!!これからの展開が楽しみです。青さんが何を考えてるのか全然わからない笑 橙さんは少し緑のことが好きだったのかな、だから出勤してきたのかな、と考えを巡らせてます。更新頑張ってください! (2021年9月27日 11時) (レス) id: 5dae2b6d43 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れいんと。 x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年9月5日 11時

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