【Fischer's】水魚之交 III【短編集】

ザカオ：大生誕祭 ページ44

「俺も手伝おうか?」

今日は愛するザカオさんの誕生日。ハチャメチャに意気込んでパーティの材料を買い倒し、早速昼からディナーを作ろうと袖を捲っていた私にザカオさんがリビングから顔を出した。

『何で?今日はザカオさんの誕生日何だから、主役はどっしり構えててよ』
「でもその量の飯1人で作んの大変じゃね?」
『大丈夫大丈夫!このくらい何とか…』

心配掛けまいと材料の袋を持ち上げて見せたが、勢いでふらついて危うく落としそうになった所を私ごとザカオさんが受け止めてくれた。

「ほらな?やるよ、俺も一緒に作りたいし」
『で、でもザカオさん…包丁持てる?』
「おう任せろ!」

と意気込んでいた10分前のザカオさんは、一体全体何処にそんな自信があったのか。

『ちちち違うザカオさん!それ多い入れ過ぎ!』
「でもボウルの粉が見えなくなるまでって」
『うん見えなくなるまでね!?何で全部入れたの?!』
「あ、全部入れんじゃないの?」
『入れてもいいけど味薄過ぎるよ』
「んじゃあ砂糖入れる?」
『うん…ぇ』
「はいっ」
『だから何で全部入れるの!?』

包丁の使い方は怖いし、火は強火にするし、材料は残さず使い切るのがセオリーだと思っているようで、料理作りは難航する一方。

「AA、これどう?」
『ん?あっ上手ザカオさん!卵1つも殻入ってないね!』
「ふへへ、だろ?俺だってこんくらい出来んだよ?」
『ザカオさん素敵!』
「ありがとう、Aもめちゃくちゃ手際いいね。いつでもお嫁に行けるよ。俺ん家来る?」
『本当!?行く!』

予定より既に1時間も時間が掛かってしまっているけど、褒めれば褒めるだけ可愛らしい笑顔を見せてくれるザカオさんを叱る事も出来なくなって、ふざけ出したらもう止まらない。

「じゃあ今から結婚パーティだ!ケーキ作ろうケーキ!」
『スポンジ買って来てるよ!取るから待ってね』
「いいよ俺取る、これ?」
『そうそれ!ありがとう好き!』
「へへへへへっ」

屈託もなくなり、ザカオさんが後ろから手を重ねて調理をしたり、摘み食いしたりと、やりたい放題充実した1日を過ごした結果、全ての料理が完成したのは18時過ぎ。
本来ならこの後ワインを飲みに出掛ける予定だったが、あまりにも家にいる時間が楽し過ぎた為すっかり夜も更けてしまい、片付けを明日に持ち越し2人で1つの布団に包まって目を瞑った。

『疲れたね』
「やー、笑い過ぎた」
『ザカオさん』
「ん?」
『お誕生日おめでとう』
「…おうっ、ありがとう」

END

　

モトキ：君の逃げた先は僕がいい→←シルク：好きなだけじゃ勿体無い

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