ザカオ：愛慾 ページ35
『最近大学の頃の友達と連絡が取れないんだよね』
Aはそう言うと俺にスマホの画面を見せながら友人に電話を掛けた。通話は開始される事も留守電に切り替わるでもなく繋がらない。
『この人だけじゃなくてバイト先の先輩とか、あと良く行く本屋の店員さんも、急に無断欠勤し続けてるって聞いて…』
「何それ、不気味じゃね?」
『そうでしょ?何だか悪い予感がするの』
「どう言う事?」
スマホをテーブルに置いて横に座る俺の肩口に頭を寄せるAの表情は晴れない。それ所か、これ以上に不吉な事が起こる気がするとさえ言い放つ。
『昨日実家の方にも電話したんだけど…』
「出なかったの?」
『……もしも何か遭ってたら、どうしよう』
震える声。彼女は随分他人を気にかけるみたいだ。
『ねえ』
「ん?」
『ザカオくんは、大丈夫だよね…?』
「…おう、大丈夫。俺がさ、Aからの電話に出なかった事あった?」
『ない、けど…』
「何なら一緒に住んでもいいくらいだからね」
そこまではいいよ、とAは苦笑した。安心したのか目を閉じて体を預けだした彼女に応えるように、俺も腕を回し肩を抱き寄せる。
『そうだ、もう一つ聞きたかったの』
「何?」
『最近ザカオくん、良く遠くに出掛けたまま一週間くらい帰って来ない時があるけど…あの時、ザカオくんは何をしているの?』
「………」
『どうしてこの話だけは、ずっと何も教えてくれないの?』
フラッシュバックする記憶。俺より背も態度もデカい男が倒れて伸びる赤い水溜まりとお気に入りの服に浴びた返り血。
Aは不用心過ぎて、人を疑う事を知らないから、彼女を俺が護ってやらなければいけなかった。そして護る為には、周囲に邪魔な存在があまりにも多過ぎたのだ。
「小旅行だよ。最近嵌ってて」
『……本当に?』
「本当に」
赤の他人であれ、世話になっていたにしたって、例え家族だったとしても。Aを見る汚物の目が光ればそれを取り除く事は、俺にとってもAにとっても為になっているに違いはない。
『ねえ、ザカオくんには、疚しい事なんてないんだよね?』
「うん、ないよ」
『…そう、だよね。大丈夫何だよね』
「当たり前だろ?ね、こっち向いて」
不安に襲われているAの顎を掬ってキスをする。君は知らなくていい。全て君の為なのだから。
俺は君の為ならこの手が血に染まっても厭わない。
END：ヤンデレ：駆逐型
参考資料
シルク：DIVE to the HEART→←ぺけたん：愛憐
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ポリフェノール(プロフ) - coyumaさん» 初めまして、コメントくださり誠にありがとうございます! 最上級の褒め言葉を頂けて大変嬉しいです、ありがとうございます。 続編は、話のネタがある程度の数が固まり次第また再開しようかと思っております。なのでその際はまたお話を覗いてくだされば幸いです! (2019年7月5日 20時) (
レス) id: 77269a22b5 (このIDを非表示/違反報告)
coyuma(プロフ) - 私もシリーズの最初からずっと楽しく読ませてもらっていました。ポリフェノールさんの文章は情景が思い浮かべることが出来て、あたかも自分のことのようにドキドキできます。続編も書いてほしいです。時間があるときでいいですので！ (2019年7月5日 20時) (レス) id: 96592c7e36 (このIDを非表示/違反報告)
ポリフェノール(プロフ) - 美夢さん» 初めまして、わざわざコメントしてくださり誠にありがとうございます! 最初から見て頂いているなんてとても嬉しいです、ありがとうございます。 続編は、話のネタがある程度と溜まってきたらまた始めようかと思っておりますので、またご贔屓にしてくだされば幸いです! (2019年6月28日 0時) (レス) id: 77269a22b5 (このIDを非表示/違反報告)
美夢(プロフ) - 水魚之交1から全部見てて、大好きな話を何回も読み返しています！どんなに遅くても良いので続編希望します！ (2019年6月28日 0時) (レス) id: 70c1150dfd (このIDを非表示/違反報告)
ポリフェノール(プロフ) - あいぴょん♪さん» 初めまして、コメント誠にありがとうございます。ご返信遅れまして大変申し訳ございませんでした。自分もフィッシャーズさん大好きです、応援ありがとうございます! またお暇な時に覗いてくだされば幸いです。 (2018年9月24日 21時) (レス) id: 77269a22b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ポリフェノール | 作成日時：2018年6月13日 19時
