惚れたが負け ページ16
途中で走るのを諦めて、数分遅れで大倉くんがいるはずの教室に入った。背が高くて髪の毛も明るい彼がどこに座ってるのかはすぐ見つけることができた。
スマホを確認したけど、七瀬ちゃんからの連絡はない。折り返しがないことに心配しつつも、大倉くんのところへ向かう。
『…お、おはよう』
「俺、怒ってんねんけど」
『やっぱり、ですよね…』
通路側の席に座ってた大倉くんが立ち上がる。隣の席に私の鞄が置いてあるから、そこに座る。私が座ると大倉くんも元の場所に戻った。逃げ道を塞ぐように。
『昨日大丈夫だった?』
「なんが?」
『や…大倉くん酔ってたから』
「心配かけてごめん。やけど、その話はええから…なんで、ヤスの連絡返さへんの?」
ストレートに疑問をぶつけてくる大倉くん。体の中からなにかがせり上がってくるような感覚になって、途端に息苦しくなった。小さく息を吐いて、落ちつかせる。
「言い逃げ。シカト。おまけに約束破って…自分のやってることわかってる?サイテーやん」
『っ…大倉くんには、関係ない』
「関係ある。ヤスのためやったら、なんにでも首突っ込むで?」
言われたことが図星過ぎて、突き放すような返答しかできなかった。大倉くんはヤスくんのことが大好きだから、もちろんヤスくんの味方。ヤスくんを大切に思う人からしたら、私のやってることが許さなくて当然だと思う。最低だって、言われても仕方がない。
『…私、そんなに強くない。逃げたいときもある!今がそのとき!』
「逃げてなんか解決するんか?連絡くらい返せばええやろ!」
『シカトしたくてしとるんやない!』
「矛盾してんねん!ちゃんとせえや!」
そんなやりとりをしていると講義開始のチャイムが鳴って、大倉くんが舌打ちをする。私的には、一旦気持ちの整理ができるからありがたかった。
一時休戦。2人で椅子に深く座ると、大倉くんがボソッと一言だけ呟いた。
「ヤス、弁当待ってたんやから」
たった一言なのに、それは後悔を生むには十分過ぎて。たった一言なのに、それが嬉しいと感じてしまう私は、ヤスくんを悪者にはできない。やっぱり好きだ。うん、ただ、好き。
気持ちを溜め込んだのも、爆発させたのも私。
どんどん欲張りになって、ヤスくんに求めたのも私。
受け止める覚悟がないのも私。
変わらないといけないのは、私だということに気づいた。
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蒼乃碧(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました!そして…完結おめでとうございます!コメントを拾って下さって本当に嬉しかったです! (2020年2月12日 21時) (レス) id: b2e7866667 (このIDを非表示/違反報告)
おゆ(プロフ) - ゆんゆさん» ゆんゆさんコメントありがとうございます!無事完結することができました^ ^ (2020年2月12日 20時) (レス) id: c48463ca18 (このIDを非表示/違反報告)
おゆ(プロフ) - みきさん» みきさん!毎回更新の度にコメントして下さってありがとうございました!わたしも最後まで更新できてうれしいです…!!!引き継ぎどうぞよろしくお願いします^ ^ (2020年2月12日 20時) (レス) id: c48463ca18 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 完結おめでとうございます!主人公のこと大好きなヤスくんが読めて嬉しいです!今後の作品も楽しみにしています! (2020年2月12日 7時) (レス) id: d5b4f7ed9e (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 更新ありがとうございます!読めるだけで嬉しいです。続きも楽しみにしています! (2020年2月3日 7時) (レス) id: d5b4f7ed9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おゆ | 作成日時:2019年8月4日 0時