声だけじゃわからない ページ11
『えっと…駅の近く』
「はあ？もうそんなとこおんの？」
電話だと顔が見えなくて表情が分かんないから、小さい溜息一つで一気に不安が押し寄せる。いつも通りのヤスくんなのかもしれないけど、いつも以上にイライラしてるように感じてしまう。めんどくさいって思わせちゃってるのかな…いやだなあ。
『先に帰ってきちゃってごめんなさい…連絡、すればよかった。今気付いた。ばかだ。』
ヤスくん戻ってくるまで待ってればよかった。電話でもラインでも、先に帰るねって連絡すればよかった。今思い返せば、いろんな方法があったことに気づいて、自分で自分が嫌になる。もっとちゃんとしないと、好きになってもらうどころか、嫌われちゃう。あー、今日はとことんネガティブだ。
「……ちゃうやん」
『？？？』
「俺が…」
『ヤスくん？』
電話の向こうで、ヤスくんが小さくため息を吐く。俺が、から先があんまり聞こえなくて、駅に向かって歩いていた足を止めて、ヤスくんの声に集中した。
「俺が席離れたんがあかんかってん。」
「トイレから戻ったら、お前どこにもおらんし…帰った言われて、焦った」
『ヤ、ヤスくん…？』
ヤスくんが話してるのに、内容がヤスくんじゃなくて。いつもだったら、勝手に帰んなやあほ！とか、なんではよ連絡せえへんねん！みたいに言ってくるはずなのに。弱弱しい声のヤスくんは初めてで、戸惑ってしまう。
「ちょ、そっから動くな」
『え？』
「ええか、絶対動くなよ」
『は、はい』
声が急に変わって、いつものちょっとだけ低めの命令口調。ころころ変わるから処理が追い付かなくて、言われるがままその場で立ち止まる。
電話は耳に当てたままにしてるけど、ヤスくんは無言で、特に何か話すわけではないけど切ることができなかった。ザーザー風を切るような音が聞こえるくらい。今そんなに風強くないのに。
ここ、ピンポイントで雨降るのかな、とか爆弾降ってくるのかな、とかあり得ないことを考えながら空を見上げてみた。そしたら、視界にぱっと入ってきた、見覚えのある柄。ヤスくんのお弁当箱を包んでるランチクロス。
「っはあ…追いついた」
振り返れば、お弁当箱をこちらに差し出すように片腕を伸ばして、膝に手をついて蹲り肩で息をするヤスくん。ぼーっとしていたところから一気に情報が入ってきて、また処理が追い付かなくなる。差し出されるまま、お弁当箱を受け取った。
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蒼乃碧(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました！そして…完結おめでとうございます！コメントを拾って下さって本当に嬉しかったです！ (2020年2月12日 21時) (
レス) id: b2e7866667 (このIDを非表示/違反報告)
おゆ(プロフ) - ゆんゆさん» ゆんゆさんコメントありがとうございます！無事完結することができました^ ^ (2020年2月12日 20時) (レス) id: c48463ca18 (このIDを非表示/違反報告)
おゆ(プロフ) - みきさん» みきさん！毎回更新の度にコメントして下さってありがとうございました！わたしも最後まで更新できてうれしいです…！！！引き継ぎどうぞよろしくお願いします^ ^ (2020年2月12日 20時) (レス) id: c48463ca18 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 完結おめでとうございます！主人公のこと大好きなヤスくんが読めて嬉しいです！今後の作品も楽しみにしています！ (2020年2月12日 7時) (レス) id: d5b4f7ed9e (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 更新ありがとうございます！読めるだけで嬉しいです。続きも楽しみにしています！ (2020年2月3日 7時) (レス) id: d5b4f7ed9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おゆ | 作成日時：2019年8月4日 0時
