54. ページ24
勝ったら、どうするのかという思考は捨てていた。ただ一つ思っていたのは、人使の役にたつ事──それが彼にとって偽善の塊、鬱陶しい事だったとしても。自分がそうしたいと思ってしまった。
「ありがとう、人使…使ってくれて」
周りにはいまいち理解が出来ていない様子の男子に、モニターに映し出されている結果。他の皆もボロボロ、満身創痍という言葉が似合う。それはもう、
「…ご苦労様」
彼が私を使ってくれて、無事に終わった事は明白であった。
人使は此方を見る事なく、歩いていくが私は何の不満もない。そう、心にあるのは満足感。不思議な感覚だ。
(満足感か…満たされてるなんて、変なの)
適当に物を買って食堂を出た時だった、
「やぁ、A君」
掃除のおじさんに声をかけられたのは。
掃除が仕事の彼でも体育祭に来るものなのだろうか？なんて疑問は生まれたが、些細な事だと思ったし、何なら雄英の体育祭は人気で注目もされているから、この人も見物に来たのだろうと片付いた。
「何かご用でしょうか？」
「問題は解決したのかなぁと思ってね」
いい笑顔である。
「いいえ、残念ながら」
「そうか、難儀だね」
足は自然と中庭へと向かっていて──やはり誰も居なかった──おじさんも一緒だ。何故付いてくるのかは分からないのだけれど、この間の様に追いかけられても困るから何も言わない。実のところ、私はこの人が怖い。ベンチに座り込んだ、勿論彼も隣に座るのだ。
「答えは出そうなのかい？」
「…どうでしょう、悩み続けての今日ですから」
遠くで、声がした。酷く楽しそうなものだ。
「悩むのはいい事だと思うよ、私は」
「ただ、手遅れになる前に話をしておく事を推奨するな」
「私も失敗した内の…いや、何でもないよ」
視線だけを送る。横顔は寂しそうなそれで。けれど私が口出しする様な事じゃない。
「お互い解決するといいですね」
慰めかの様な言葉だったが、おじさんは怒るわけでもなく、ただ頷いた。
日差しが少しづつ強くなっている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 350人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
八百(プロフ) - すごく好きです！！続きめっちゃ気になります！！仲直りしてほしいけどもうそのまま行って欲しいって思ってしまう矛盾… (2019年3月21日 21時) (
レス) id: db047f61b6 (このIDを非表示/違反報告)
あお果実(プロフ) - とても面白いです！これからも応援してます(*´∀｀) (2019年3月6日 16時) (レス) id: 11c4dc89d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラ満開(プロフ) - めずさん» つい笑ってしまいました、コメントありがとうございます！頑張ります (2018年11月23日 17時) (レス) id: 2c4514670e (このIDを非表示/違反報告)
めず - なんでお星様1回しか押せないの！！！って感じに好きです生き甲斐をありがとうございまｧｧｧ！！！！本当はお星様50回くらい押してるので評価の回数に+50しておいて下さい(応援してます頑張って下さい) (2018年11月23日 2時) (レス) id: 73450a1efe (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラ満開(プロフ) - 谷崎さん» コメントありがとうございます！声をかけて下さっただけでとてもありがたいです…！ (2018年11月20日 0時) (レス) id: 2c4514670e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゴリラ満開 | 作成日時：2018年10月3日 3時
