L O V E . ＃ 2

Just keep going 7. ページ48

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｢…だとしたら、俺｣
(きっと彼女を傷付けた)


｢そうだねー｣


｢でも、"最初より、もっと嫌い"って…｣



ふっ、と吹き出してははっ、と楽しそうに
思い出し笑いを繰り返す裕貴さん。


一気に青ざめた表情を浮かべて頭を抱えた俺に
とどめの一発を入れて満足したらしい。


裕貴さんは、よっぽど俺の落ち込んだ姿が
ツボだったのか未だにニヤニヤしながら
笑っていて…



｢だから、笑いすぎですって…！｣
(俺、確実に相談する相手間違えた)



テーブルから体を乗り出してそう叫ぶと
ゆっくりと立ち上がる。


空になったグラスをトレーに乗せて
そのまま返却口へ向かうと、
すぐに後を追って裕貴さんも席を立ち
隣に並ぶと俺の肩を軽く叩いた。



｢壱馬！｣


｢はい？｣
(あー、また悪い顔して、もう…)


｢まぁ、頑張って、ははっ…！！｣


｢…ふは、はい、そのつもりです｣



慰めなのか、それとも馬鹿にされてるのか
結局、真意は分からないまま…


それでも、どこか沈んだ気持が紛れて
少しだけ楽になったような気がした。


あまりアドバイスは得られなかったものの、
ただ誰かに愚痴を溢したことで
軽くなった気持ち。


故意に彼女を傷つけてしまっていた
自分のふがいなさを反省して、
次に会った時は、
もっと素直になろうと心に誓った。



(こんな事で立ち止まってる暇なんか無い)



先にタクシーに乗ってこの場を去って行った
裕貴さんの言葉を振り返って、
俺は一人そう呟いてふっと笑って目を伏せた。


それから、
無造作に鞄にしまっていたスマホを取り出して
俺は彼女にLINEを一つ。



壱馬話があるから、今日もコンビニで待ってる。



｢…よし、｣
(これで良いよな)

　

また曖昧な文章に見えるけど、
今回はうっかりミスじゃない。


俺はわざと時間は指定しないでLINEを送った。
その曖昧な言葉の裏側に隠された
俺の本音なんて
彼女にはきっと伝わらないんだろうけれど、
今はまだそれでも良い。



押しつけがましいのは好きじゃない。



スマホの液晶画面上に表示された、
"既読"の文字を確認して、
俺はそっとスマホを握りしめて一人頷いた。


道路を行き交う車の流れに目を向けながら、
空車のタクシーを見つけると
軽く手を上げて合図すれば
目の前にゆっくりと停車する一台の車。


ドアを開けて乗り込んだ俺は、
早口で行き先を告げてから、
誰にも見つからないように
一人にやりと口の端を上げて笑った。




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