L O V E . ＃ 2

Just keep going. ページ42

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｢……………。｣
(何やねん、あの男)



初めて彼女と待ち合わせして
ようやく実現した貴重な二人の時間。


それを見事なまでにぶち壊していった
あの男の嫌みな表情が
脳裏に焼き付いて離れない。



あれから結局、
俺とあのムカつく男とのやり取りは
平行線を辿ったままで、
見るに見かねた彼女がその場で…



『隼人、』


『悪いけど今日は帰って…』



そう不機嫌な表情ではっきりと言い切ったから
俺は、少しだけホッとして一人静かに
溜め息を溢すと、


ようやくそこで
彼女を抱き締めていた手を離した。


こんな風に彼女を勢いで抱き締めたのは
多分、というか、絶対に
突然現れた親しげな男に対しての焦りだった。



『分かった、分かった…』


『じゃあ、また明日、な』



渋々、納得したそいつは
ひらひらと手を振りながら
踵を返して行った。



また、明日。



何の気兼ねもなく、さらりとそう言える姿が
悔しいけど羨ましくて仕方なかった。


俺がなかなか素直には呼べない
彼女の名前だって、そう…


軽々と彼女の名前を呼んでしまえる関係だと
まるで見せつけるかのようで。


ようやく少し近付いたと思っても、
こんな些細な事で簡単にその自信は揺らぎ、
今にも崩れてしまいそうだった…



｢……っ、｣
(そういえば俺、まだ)



彼女に名前で呼ばれた事すら無い。
気付きたくはなかった現実を突き付けられる。


そして、それは説明出来ない敗北感となって
ぐさり、と残酷なまでに
胸に突き刺さった。



｢……………。｣
(明らかに、友達って訳でも無さそうやし)



これまで男の影なんか
ちっともしなかった事もあって、
少し悠長に構えすぎていたのかもしれない。


既にこの場から立ち去ったあの男が
俺に与えたダメージは計り知れないほどで…



｢何か、ごめんね｣


｢別に…｣



せっかく気をつかって彼女が謝った台詞さえも
素直には受け入れられなくて、
ついつい冷たくあしらってしまった。


怒り、というには
あまりに自分勝手な感情に
思わず漏れた溜め息。


隣に並んでいた彼女は
何も言えず黙り込んだまま___



｢……っ、｣
(何か言えや)



何のフォローすら入れずに黙り込まれると、
こっちだって切り出しにくくなるやろ。


そう嘆く心の内を、
彼女な吐き出せないままに
無情にも流れていく時間。


無言の沈黙に張り詰めた空気は
次第に重くなり、
結局根負けして口を開いたのは俺の方だった。





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