L O V E .

Umbrella 4. ページ5

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『先程、連絡頂いた和泉さん』


『です、よね…？』


「………あ！」
(やっと来た！)



エレベーターから陽気すぎる声を上げて
降りてきたスーツ姿の管理業者さんは、
私と彼が作り上げたピリピリの空気感に
遠慮なく割り込んできたものの…


次第に、険悪な空気を察したのか
語尾が弱々しくなっていた。


キョロキョロと私と彼に視線を泳がせ
何度も頭を下げたその人の登場は
私にとって、まさに天の助けに見えた。



「ずっと待ってたんですよー？｣
(→わざとらしい棒読み)


『は？』



にやりと笑いながらそう言って、
フフン、と鼻を高々に言って
彼を横目にちらっと見て髪を靡かせれば、
彼はぽかんと口を開いたまま動かなくなった。



『和泉さん、代わりの鍵お持ちしましたので』


『これで…』



管理業者の彼は鞄の中を漁り、
鍵を取り出しそそくさと私に手渡すと
礼儀正しく頭を下げ
足早にエレベーターに乗り込み去って行った。



｢さて、と…｣
(よくも不審者扱いしたな、この野郎)



未だ呆然と立ち尽くしたままの彼にくるり、と
体ごと向きを変えた私は満足感たっぷりに
鍵を彼の視界ギリギリにぶら下げて
言ってやった。



｢そういう事だから、｣


｢勘違いしないでくれる？｣



ふっ、と小さく笑いながら口角を上げて
皮肉を言えば
彼は悔しいのか申し訳無いと思っているのか
どうにも複雑な表情で…



『なら、最初からそう言えば良いやろ』


『紛らわしい事すんなよ…』



羞恥心からなのか勢いよく顔を背けて
そう吐き捨てた彼はビニール傘とコンビニ袋を
だらしなくぶら下げたまま踵を返して歩き出す。



｢何なの、あれ｣
(勝手に勘違いしたのに謝罪も無し！？)



謝るのかと思えば、
彼の口から出てきたのは憎たらしい言葉。
ムカついてわざと足音を立てて後を追えば、



『おいっ！』


『付いてくんなや！』



勢いよく振り返った彼はビニール傘で
私を指差して不満気に叫んでくる。


黙っていればルックスも良いし、
きっとモテるに違いない。
だけど今、目の前で興奮気味に叫ぶ彼は
私にとってただの嫌味な奴しか見えず…



｢生っ憎だけど…｣



と、前置きをして
彼の横をスタスタとすり抜けた私は
先程受け取った鍵で角部屋のドアを開けて
言い返してやった。



｢私の部屋、｣


｢此処(・・)だから！｣



そう言って、勢いよくドアを閉めて中に入った。
言いたい事が言えて満足した私が
玄関でにやりと笑っていると、
すぐ近くからバタン…と扉が閉まった。



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