L O V E .

I don't know. ページ21

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｢絶対に持たなきゃ、駄目なの！？｣



後輩が待ちに待っていた
番組収録の日がやって来た。


私にとってはまさにＸデイでしかない今日。
観覧客の列に並びながら
彼女が私に手渡したのは"壱馬、大好き"
と、可愛く書かれたメッセージボードだった。


あぁ、もう
今すぐ帰りたい___








｢当たり前じゃないですか！｣


｢目立たなくちゃ、」


｢壱馬に気付いてもらえないですよ！？｣



気合いの入った顔付きで興奮気味に話す彼女は
有無を言わさず私の胸にそれを押し付けた。



｢いや、私は…｣



どちらかと言えば、
目立ちたくは無いのですが…
と、頭の中で一人呟いた。


それでも沢山のファンに囲まれたこんな場面で
文句を言えるはずも無く、



｢わ、分かった…｣
(最悪だよ)



苦笑いを浮かべながら渋々それを受け取った。
メッセージボードに書かれた文字を見つめながら
無意識に出た溜め息に、
後輩はわざとらしく咳払いをして、



｢楽しみですね、ナナさん！｣



にっこりと口角を上げて笑った後輩が、
今日ばかりは悪魔に見えた。
どうやら、言い返す隙は無さそうだ。



｢にしても、｣


｢すごいファンの数だね…｣



メッセージボードの件については
泣く泣く諦めて、ふと並ぶ列を見渡せば
沢山の彼らのファンが
今か今かとスタジオに入るのを
待ちわびている。


その数の多さに感心していれば
後輩はやけに満足そうに言った。



｢ライブになるともっとすごいですよ？｣


｢ナナさんも、今度行きます？｣



そう言って、あたかも
自分の事の様に自慢した彼女は
私の肘を突っついて嬉しそうに、
にやりと微笑んだ。



｢え、遠慮しときます…｣
(いやいや、冗談じゃない！)



再び苦笑いで冷や汗を浮かべながら
丁重にお断りして見せれば、



｢絶対、ハマるのになぁ…｣


｢ナナさん、絶対人生の半分は損してますよ｣



むーっと口を尖らせて残念そうにそう言った。
損得勘定で見た時に、
果たして自分の人生が損しているかどうか
それは分からない。


だけど、このグループにハマる事が
本当に得なのかどうかも分からなくて…



｢さぁ、それは…｣


｢どうかな？｣



なんて、彼女の言った台詞に対して
曖昧な返事で誤魔化した。


心配なのは、私がこの場所にいる事で
また変な誤解を生まないかどうかと言う事だ。



｢……………。｣
(こんな沢山ファンが居るんだし、心配ないよね)




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