＿＿Secretive. (秘密主義者) #1 / drm

表 と 裏 / Y O U ページ48

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エレベーターの中だからなのか、やけにその声が響いて
反射的に少しビクッとなって肩を揺らしてしまったのを見て
だるくんはちょっとだけ怯んだようにも思えたけど、




『てか、漫画書いてる奴が利き手怪我したまま放っとくなよ。
万が一、絵が書けんようにでもなったらどうすんねん！』




もはや、一度入ってしまったブチ切れモードは
だるくんも制御不能で止めることが出来ないみたいだった。



だるくんがそこまで考えた上で心配してたって事が分かって
本当に嬉しかったのはやまやまなんだけど、




「いや、あの、でも本当に大したこと無いんだよ…？」




駄目押しで、恐る恐る泣きの一言を言ってみたものの
どうやらこの勝負の行方はだるくんに手を掴まれた時から
既に、もう決まってたらしい。



だって、ほら。




『良いから俺の言うこと聞けって、この馬鹿たれ小娘が！』




絶対、私のこと服従させるまでは引かないつもりだもん。
なんとなく空気がヒリついてるのが分かって
少しお互いが黙れば、途端にシン、となるエレベーター内で…




「もう、分かったから、そんな怒らんとってよー！」




東京で初めて出来たお友達にガチで怒られて、説教された。
しかも、全部私の職業とかを理解した上での発言だから
もう、ここまで言われちゃったらぐぅの根も出なかった。



どうやら、ここら辺で観念しとくしかないみたい。
なんとなくそんな事を空気的に悟って、半べそかきながら
だるくんの腕をペシペシと軽く叩いてみせれば…




『あー、これは、さすがにちょっとビビらしちゃったか？』



「ビビるなんてもんじゃないもん、めっちゃ怖かったぁ！」



『え、泣いてる？うわ、泣いてるやん！マジごめん！』




瞳の奥に薄ら涙が溜まって膜が出来たのを見てしまったのか
急にあたふたしだして、どうしたら良いのか分からないって
そんな顔しただるくんが咄嗟に私を軽くハグしてきて…




" 俺も早くナナの手当せなって必死やったから
つい、強気に出ちゃったけど、本気で心配やったからこそよ。
それだけは、ほんまに分かって欲しい。



でも、結果、泣かせたんはほんまに俺のせいやからな。
後でちゃんと、ごめんなさいするから許してくれんか？ "




ボソッと耳元で囁いたその言葉が不覚にも可愛くて
心臓の辺り、ギュンってやられちゃったから
今回の勝負は私が折れることにするね。







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