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なんとなく気になってもうて、まともにカレーを味わえへん。
ちらりと彼女を盗み見るけど向こうは俺のことなんて少しも気にもしてへんみたいにただ淡々とカレーを食べて、時々トレーの横に置いたスマホを覗き込むだけ。
一度も話したことがないとは言え、俺は彼女の名前と同期としての存在を知っていたように、
同じ部署やし彼女も俺の存在くらいは知っとると思うんやけど。
何故か少し不安になる。
ぼーっと彼女を見ながらカレーを咀嚼し飲み込んだ。
そして水の入ったグラスに手を伸ばしカレーを流し込むように飲む。
「あの」
意識より先に、声が出た。
まるで頭の中でぼんやりと考えていたことを誤って声にしてしまったみたいに、
俺の声に彼女が顔を上げてから俺は自分でもびっくりしてとっくに喉を通ったはずのカレーが戻ってくるような感覚に襲われる。
「はい？」
カレーを食べる手を止め、俺を見る山田さん。
「山田さんやんな。」
話しかけた後の話題も、話しかける理由もないのになんで俺は話しかけたのかと数秒前の自分を責めたくなる。
彼女は特に驚いた表情をするわけでも、にこやかに微笑むわけでもなく、
「うん。そうだけど。大倉くんだよね。」
と真顔で小さく頷いた。
「ああ…おん。」
俺の事、知ってはいたんや、と俺も頷く。
「どうしたの？」
どうしたのって。
俺やって知りたいわ。なんで話しかけたりなんてしてもうたんか。
「あ…いや、俺ら同期やのにあんまり喋ったことなかったなて。」
苦し紛れにナンパ男のような台詞を言ってしまい、俺はまた後悔する。
そしてそれに追い打ちをかけるように、
「あんまり、というか、一回も、ね。」
あまり温度のない声で彼女は言った。
「…そやな。」
俺は視線を置く場所を失って、トレーを持って列に並ぶ人達の方に視線を泳がせた。
心の中ででかいため息をつく。
やっぱり俺の『馬鹿真面目で取っつきにくい苦手なタイプ』というイメージは間違ってへんかった。
愛想もないし感じも悪い。
話しかけなければ良かった。
嫌な気分なったし、カレーは冷めるし。
いつの間にかさっきまでのようにカレーを食べている彼女に腹も立ってきた俺は、
珍しく、ムキになっていた。
ムキになっていたから、
「この間、事務職の市瀬さんが仕事ミスって叱られたって聞いたんやけどさ…」
俺の口はまた、後で後悔するような事を話し始めた。
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蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、初めまして。有難いお言葉に胸が熱くなりました…後先考えずにがむしゃらに書いてしまった荒すぎる出来の中でふたりの互いに想い合う気持ちは一番慎重に書いたのでそう言っていただけてとても嬉しいです！こちらこそ読んでくださりありがとうございました^^ (2018年11月10日 23時) (
レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - はじめまして。あまりにも続きが気になって一気に読ませて頂きました。描写はもちろん、ヒロインと大倉くんのお互いを想う切実さが綺麗で、思わず息が詰まりました。とっても素敵なお話をありがとうございました。 (2018年11月9日 15時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年8月7日 18時
