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東京は星が見えない。
大阪に住んでた頃もさほど見えたわけやないけど。
それでも今日の空は雲がひとつもなくて穏やかで綺麗やと思った。
彼女の住んでたところではきっともっと夜の空が綺麗に見えるんやろうなって、『信じられないくらいの田舎』を想像しながら深い青っぽい黒色の空を見上げる。
「大倉くん」
夜に俺を呼ぶ彼女の声がふわりと浮かんで届いて、俺は声のする方を見た。
マンションから出てきた彼女は空色のストライプのパジャマに赤いカーディガンを肩にかけている。
すっぴんを見るのは初めてやないけど、やっぱりいつもより幼くて、それなのに普段と違ってラフにまとめてる黒い髪の毛は色っぽい。
ちぐはぐのようで、それがまた不完全で綺麗やった。
「大倉くんって意外と強引なところあるよね。」
呆れ顔で俺の横に立つと腰に両手を当てて、まったく、とでも言いたげな表情で俺を見てきた。
「…ごめん。」
「だから、そういう時謝っちゃだめなんだって。」
仕方なそうに笑ってマンションの前の階段に彼女は腰かけたから、俺も隣に腰を下ろす。
風が吹いて彼女からせっけんの香りがした。
少しだけ沈黙が流れた。彼女は自分の細い指を伸ばしてじっと見ている。
「今日、結婚式やってん。あいつの。」
ゆっくりと吹き流れる秋の風と同じテンポで俺はゆっくり、口を開いた。
彼女はちらりと俺の方を見る。
「…うん。」
「正直、どんな気持ちになんねやろって怖くて、できればあんまり行きたなかったんやけど。」
「うん。」
一度大きく鼻から息を吸って、吐いた。
気のせいかもしれないけど、金木犀のにおいが鼻をかすめたような気がした。
「でも…行って良かった。あいつ、めっちゃ幸せそうやってん。綺麗事とかそういうんやなくて、ほんまに、嬉しくなったから。」
ただじっとして話すにはあまりにも感情の数が多すぎて俺はすっと立ち上がり、真っ直ぐ目の前に視線を向ける。
「それにちゃんと口にできてん。あいつにもやけど。自分にもちゃんと言葉にできたから、やっと、終わりやなって。」
まだ座っている山田さんを見下ろすと彼女も顔を上げて俺を見ていた。
「やっと、解放された気分。めっちゃすっきりしたわ。」
そう言って笑ってみせた。
彼女は何故か泣きそうな顔で小さく笑った。
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蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、初めまして。有難いお言葉に胸が熱くなりました…後先考えずにがむしゃらに書いてしまった荒すぎる出来の中でふたりの互いに想い合う気持ちは一番慎重に書いたのでそう言っていただけてとても嬉しいです！こちらこそ読んでくださりありがとうございました^^ (2018年11月10日 23時) (
レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - はじめまして。あまりにも続きが気になって一気に読ませて頂きました。描写はもちろん、ヒロインと大倉くんのお互いを想う切実さが綺麗で、思わず息が詰まりました。とっても素敵なお話をありがとうございました。 (2018年11月9日 15時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年8月7日 18時
