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彼女が風邪から復帰した後、社内で顔を合わせれば雑談くらいはするけど一向に近づけている気はしないし、
彼女の足がまだ完治していなかったから飯も誘うに誘えないままで。
そのことを思い出した途端に、彼女が今どうしてるのか気になって、
気づいたら地上に上がって外に出て、ポケットから携帯を取り出していた。
こういうのは、勢いが大切やってことは分かってる。
少し戸惑いそうになった指で画面に触れると携帯を耳に当てた。
着信音はしばらく繰り返し流れて、少し冷静になった俺が携帯を耳から話そうとした時、
『もしもし。』
着信音がぶつりと切れて彼女の声が聞こえた。
「あ、大倉やけど。」
『うん。どうしたの？』
「いや…どうしたってわけでもないんやけど。あ、今あかんかった？」
『ううん。別に。』
「足は、どう？」
『…足？あー、おととい病院行って、もうほとんど普通に歩ける。』
「…そっか。よかった。」
『うん。よかった。』
数秒間、静かな沈黙が流れて、俺は指で自分の鼻先を触る。
「ほな、さ…そろそろご飯誘ってもいい？」
『……ダメって言ったら？』
「まだ足しんどいんやったらもう少ししてから誘う。」
『…そういうことじゃなくて。』
「…え？」
『…なんでもない。いいよ。誘っても。』
それは半分呆れたような口調で。
でもそんなことより、やっと彼女を誘えることに俺の気持ちは高揚する。
「じゃあ、来週の水曜日は？」
『水曜日ね。分かった。じゃあ、そろそろ。』
彼女の後ろで電車か何かのアナウンスがかすかに聞こえた。
「あ、おん。ごめん。急に電話したりして。」
『ううん。また会社で。』
「うん。会社で。」
電話が切れるのを確認してから、ゆっくりと携帯を耳から離して、息を吐く。
外を行き交う人を眺めていたらまだ熱い午後の日差しの中に新しい、涼やかな風が吹いた。
もう、9月に入って二週間が経っていた。
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蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、初めまして。有難いお言葉に胸が熱くなりました…後先考えずにがむしゃらに書いてしまった荒すぎる出来の中でふたりの互いに想い合う気持ちは一番慎重に書いたのでそう言っていただけてとても嬉しいです！こちらこそ読んでくださりありがとうございました^^ (2018年11月10日 23時) (
レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - はじめまして。あまりにも続きが気になって一気に読ませて頂きました。描写はもちろん、ヒロインと大倉くんのお互いを想う切実さが綺麗で、思わず息が詰まりました。とっても素敵なお話をありがとうございました。 (2018年11月9日 15時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年8月7日 18時
