。 ページ20
。
盆休みが明けて、また仕事が始まる。
9月までは大きい取引もないから、ぼんやりと考えていた通り今日は半休を取って午後は買い物に行くことにしていた。
若者は夏休みやし、都心は平日も休日も人が多いことには変わりないかもしれへんけど、半休ってだけで足取りも軽やかになる。
まだみんなが働いてるオフィスを去るのは少しだけ心苦しいけど。
「お先失礼します。」と目が合った人全員に控えめに頭を下げて、部署のオフィスを後にしエレベーターに乗る。
1階まで下がったエレベーターから出て、歩き出したら丁度、向かいから見覚えのある姿が歩いてきた。
外回り帰りなんかな。
鞄を肩にかけてこちらに歩いてくる山田さんと目が合って、お疲れ様、と声をかけようと思った時少なからず違和感を覚えた。
いつも背筋を伸ばして颯爽と歩く彼女が今日はなんだか歩き方が酷くたどたどしい。
確かにびっこを引いているように見える。
「え…どしたん、その足。」
開口一番、俺の前で立ち止まった彼女の足を見下ろした。
「さっき地下鉄の階段で足滑らせて、ヒール、壊しちゃって。」
ヒールを履いていても俺より10cmは低い彼女は少し俺を見上げ、いつものように淡々と俺にそう告げる。
「歩き方、おかしいやん。ヒール壊した時、捻ったんと違うん？」
「ちょっとだけね。でも平気。大倉くん今日はもう退社？」
「ああ…おん。半休もらってて。」
「そっか。お疲れ様。私オフィス戻らないといけないから、またね。」
そうやって素早く話をすり替えて、立ち去ろうとするから、
「ちょお待って。」
衝動的に、肩を掴んで彼女を引き止めて、かがんで彼女の左足に目をやった。
足首は明らかに右と太さが違ってるし、赤くなり始めてる。
「…踝、腫れとるやん。こんな腫れてて平気なわけないやろ。
病院行った方がええんとちゃうの？」
「大丈夫だってこれくらい。」
「けど、」
しつこいな、とでも言いたそうに小さくため息をつく山田さん。
けど、いくら鬱陶しそうにされてもこのまま「ほなちゃんと明日病院行くんやで」とだけ言って解放しようとはどうしても思われへんくて。
「大丈夫だってば。病院なら明日行けるし。大丈夫だから早く帰りなよ。ね。」
そう言って俺の体を押そうとした山田さんは一瞬表情を歪めたのを俺は見逃さへんかった。
。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 312人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、初めまして。有難いお言葉に胸が熱くなりました…後先考えずにがむしゃらに書いてしまった荒すぎる出来の中でふたりの互いに想い合う気持ちは一番慎重に書いたのでそう言っていただけてとても嬉しいです！こちらこそ読んでくださりありがとうございました^^ (2018年11月10日 23時) (
レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - はじめまして。あまりにも続きが気になって一気に読ませて頂きました。描写はもちろん、ヒロインと大倉くんのお互いを想う切実さが綺麗で、思わず息が詰まりました。とっても素敵なお話をありがとうございました。 (2018年11月9日 15時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年8月7日 18時
