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「褒めてるよ。まあ、キラキラしすぎてあんまり近くに居たくないけど。」
「ひど。やめてえや。キラキラとか。そんなんちゃう。」
「でも、普通の人なんだね。」
「当たり前やん。」
そっか。と彼女は頷くから、そうや。と俺も頷く。
なんだかおかしな空間やった。
「…じゃあ、私そろそろ行くね。お疲れ様。」
「うん、お疲れ。」
鞄を肩にかけてオフィスを出て行く彼女を目で追って見送り、俺も煙草だけ吸うたら帰ろうかな、と考えていたら、
またオフィスのドアが開いて彼女が入ってきた。
何か忘れ物でもしたんかと、顔を上げて彼女を見ると何故か俺のデスクの方に歩いてくる。
「どうしたん？」
椅子ごとくるりと彼女の方に体を向け俺の方に歩み寄ってくる見上げると、
「これ、あげる。慰めと言ってはなんだけど。」
そう言っていたずらっぽい笑みを浮かべた彼女は肩にかけたトートバッグの中に手を入れると何かを掴んで俺の目の前に差し出した。
手のひらに置かれたのは、小さい丸い包み紙で。
なんだかよう分からへんまま、「ありがとう。」と言うと「じゃあ。」と彼女はまた俺に背を向ける。
背筋が伸びた彼女の後ろ姿と手のひらの上の物を交互に眺めて、
彼女が去っていった後、丸い包み紙を凝視した。
……饅頭？
試しに包みを開けると、それはやっぱり飴色のまんまるとした饅頭やった。
饅頭なんて、持ち歩いてるんや……。
彼女の顔を思い浮かべながら饅頭を見るとおかしくなって俺はひとり、饅頭を一口かじりながら笑いそうになってしまう。
時間にしたら15分にも満たない短い時間やった。
せやのに、俺の心の重量は15分前とは比べものにならないほど軽くなっていて。
俺はずっと、誰かに聞いてほしかったんかな。
自分だけの思い出として外に出すことのなかった思い出と感情が、少しだけ解放されたようで、頭が随分冴えた。
――いくら噛み砕いても飲み込めないままの物をどうにか忘れたふりしたり開き直ったりして、なんとかやり過ごしてるんじゃないかな。
彼女の声がもう一度頭の中で再生され、すーっと溶けるように胸に落ち着く。
その日、俺は確かに何かが変わるのを感じた。
いつも無口で固い表情で苦手意識まで抱いていた彼女が普通に喋ってくれたことと、少しやったけど笑顔を見せてくれたことが単純に嬉しくて。
またこうやって喋れたらええなって。
そう、思った。
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蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、初めまして。有難いお言葉に胸が熱くなりました…後先考えずにがむしゃらに書いてしまった荒すぎる出来の中でふたりの互いに想い合う気持ちは一番慎重に書いたのでそう言っていただけてとても嬉しいです！こちらこそ読んでくださりありがとうございました^^ (2018年11月10日 23時) (
レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - はじめまして。あまりにも続きが気になって一気に読ませて頂きました。描写はもちろん、ヒロインと大倉くんのお互いを想う切実さが綺麗で、思わず息が詰まりました。とっても素敵なお話をありがとうございました。 (2018年11月9日 15時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年8月7日 18時
