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昼休み ページ6

朝起きて学校に着いてからの時間は異様に長く感じた。先生が行う授業も半分以上は頭に入ってこなくて、ずっと昼休みの話題を考えていた。昨日の短いやりとりを除けばこれが初めての会話だ。つまらないなんて思われたくない。
そんな生産性のない4時間目までを終えてチャイムが鳴る。早く訪れて欲しかった時間だが同時に出来るならばもう少しの猶予が欲しかった。矛盾だ。
「おーい志苑、飯食うぞー」
普段一緒に昼休みを過ごしている友だち2人から声がかかる。そういえば言うの忘れてたな。
「悪い、彼女出来たから今日からはそっち行くわ」
少しの照れ、そして優越感と共に報告をしてその場を去る。
ずるい、聞いてないぞ、という友人達の台詞を背に弁当を持って教室を出た。隣の教室の前まで必要以上に時間をかけて歩く。ドアの前まで来て躊躇しているとガラッと勢いよく扉が開いて目的の彼女が現れる。
「おや、もう来てたんだ。あんまり遅いから迎えに行こうかと思って出てきちゃったよ。さあさあ入って」
「お邪魔します」
別に他クラスに入る時に挨拶をしなくてはいけないなんてルールはないけれど、なんとなく無言で入るのも別に憚られて一応一言述べてから入る。
「周り相手ないから1つの席に2人で大丈夫だよね。お、志苑くんお弁当なんだ。いいね〜お母さんが作ってくれるの?」
「志苑でいいよ」
「了解、志苑ね。私も呼び捨てでいいよ」
「じゃあ藍崎」
「違う、絃」
「わかった、絃」
なんとなく照れる。呼び方なんて所詮相手を認識する記号でしかないのに。いや、その認識が大事なのか。名前は人を区別するだけではなくて呼ぶ人との関係性も示していると僕は考えている。つまりこの場合は今までの名前すら呼べない関係性から志苑くんという敬称を経て呼び捨てまで近づいた。この先があるかどうかはわからない。
照れを誤魔化すように言葉を続ける。
「ちなみに弁当は僕が作ってる。最初の1週間くらいは母親が作ってくれたんだけど面倒臭いって言われちゃって」
「まじで!?すっごい。朝起きるの大変じゃない?」
「別にそんなに時間かかることはしないよ。大抵冷食を詰めて終わり。それに面倒な日はそれすらしないで学食だから」
「ふ〜ん、まあそうだよね。毎日やってたら大変だもん」
よかった。まともに会話が出来ないのではないかとずっと気が気じゃなかったが意外と続くものだ。絃の相槌が上手いのかもしれない。

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作者名:志久真 | 作成日時:2019年6月18日 1時

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