告白 ページ1
「好きです、付き合ってください！」
腹の奥から精一杯に声を出したつもりだった。しかし空気を伝って耳へ響いてきたのは聞こえるかどうかすらわからないようなか細い声。
顔を上げて相手の返事を待つほどの余裕があればかっこいいのだが、そんな意志とは裏腹に視線が地面から離れようとしない。相手の方を見たら、返事を聞く前に答えがわかってしまいそうな気がして怖いのだ。
想いを告げてから何秒経ったのか数えようとしても、どんどん速くなる心拍数が邪魔をして上手く数えられない。
空から静かに降る雪が手に触れては体温で溶けていくのを10回ほど見たあたりで、ようやく覚悟を決めて顔を上げる。
そこでようやく彼女の姿を今日初めてしっかりと見た。やはり何度見ても可愛い。
「……えっと」
彼女が口を開く。先程までもバクバクいっていた心臓が余計に加速する。このまま死んでしま
うのではないかとすら思うが返事を聞かないまま死ぬわけにはいかない。鼓動を無理矢理落ち着けようと深く呼吸して正面を向く。
「確か……隣のクラスの志苑(しおん)くんだったよね。多分今までほとんど会話したことないと思うんだけれど、好きって、そういう意味で？」
名前を認知されていることに感極まりそうになるのを抑えながら答える。ここで曖昧な返答をして変な勘違いをされても困るから、国語のテストのように指示語を変換した上で。
「そう、恋愛感情って意味の好き。いきなりでびっくりさせたらごめん」
「ううん、それは全然大丈夫。でもどうして私なのかなって」
どうして……どうしてなのだろう。気が付いたらなんとなく彼女のことを目で追うようになっていて、これはもしかしたら恋なのかもしれないという漠然とした感覚のまま、たまたま放課後に見かけたからつい告白して。それで今に至る。自分でも訳が分からない。そもそもつい告白ってなんだ。
「一目惚れ、っていうのが1番近いのかも。ごめん、好きだなんて言っておいてなんだけど自分でもよく分かってないんだ」
「一目惚れか、そっか。わかった、いいよ、付き合おう」
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作者名：志久真 | 作成日時：2019年6月18日 1時
