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勇気くんが後ろに回ったことを確認した私は、じろりとスパイを睨みつけた。
「…馬鹿な女だ、首を突っ込まなきゃ死なずに済んだのになぁ!」
『やっぱり…あなたがスパイ───Xなのね』
「そういうことだ!…だが、後悔してももう遅い」
さっきの優しそうな笑みとは違って、不敵に笑ったXにぞくりと背筋が凍る。
震える足に力を入れた私は、小さく口を開いた。
『…勇気くん、逃げて』
「でもっ…」
『私は大丈夫だから、早くみんなを…!』
「…っ、うん!!」
不安そうな眼差しでこちらを見ていた勇気くんに逃げるように伝えれば、彼は戸惑いながらも走り出した。
小さく舌打ちをしたXは「ガキが…」と口にする。
「この状況で何ができる?」
…逃げようにも、私の足じゃ追いつかれるかもしれないし、何よりX本人に逃げられても厄介だから。
頭を回転させながらも、背中に冷たい汗が伝うのを感じる。
本当は怖いし、逃げ出してしまいたい。
けど、私なんかよりも勇気くんの方がよっぽど怖かったはずだから。
怖い時、辛い時、不安な時こそ──…
『…大丈夫』
大丈夫、って笑うんだ。
自分に言い聞かせるかのようにそう口にした私は、ゆっくりと顔を上げてXを見た。
笑えてるかは分からないけど。
引きつっちゃったかもしれないけれど。
私は口角を上げると浅い呼吸を繰り返した。
「…面白ェ」
そう呟いたXは、ナイフを取り出すと私に向かって走ってきた。
·
『っ…!!』
突きつけられたナイフをギリギリのところで避けた私は、少しずつ距離を取るように後ろへと引く。
『…んわっ!』
ナイフ…かと思えば蹴りが飛んできて、慌てて受け身を取るけれど後ろへと倒れ込む。
振りかざされたナイフをかわして近くにあった鉄パイプを握ると柵に足をかけて飛び上がった。
「っかは!」
顔面目がけて上から膝蹴りを入れると、さすがのXも後ろに転がる。
────カァン、とこの広い甲板に響いたのは、
『…はぁ、…はぁ』
Xの顔の横に突いた鉄パイプが地面に当たる音だ。
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ゆうみん - 頑張って、もう少しだよん、コナン君達助けてくれるよん、次回楽しみにしてます (2019年5月28日 21時) (レス) id: bf7cef9bae (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ(プロフ) - ゆうみんさん» ぜひぜひ楽しみにしていただければ光栄です!毎度コメントありがとうございます! (2019年5月28日 20時) (レス) id: 9511f3d914 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみん - やばいぞ、彼女ちゃん海おちゃたあ、早く助けに行かなくちゃあ、コナン君達はどうなるの楽しみです (2019年5月28日 17時) (レス) id: 031a0bf45d (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ(プロフ) - ゆうみん さん» 楽しみにしててください!!!!笑 これからどんどん展開が進みます!!笑 (2019年5月26日 18時) (レス) id: 9511f3d914 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみん - あああ、気になるあ、どうなるの、犯人は、彼女ちゃん達は次回楽しみにしてます (2019年5月26日 17時) (レス) id: bf7cef9bae (このIDを非表示/違反報告)
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