■大事な宝物の話 ページ36
·
『えへ、久しぶりだね。…お母さん、お父さん』
セミの鳴き声のBGMを背後に、私はお墓に来ていた。
眩しい太陽に微かに目を細めた後、私は腰を下ろす。…もちろん両親のお墓の前。
私は、さっき桶に溜めてきた水を墓石にかけて綺麗にする。
『…もうあれから2年経つんだねぇ』
しみじみとそんなことを呟けば、誰かが応えてくれているみたいに濃い緑色の木々が風に揺れてざわめいた。
───そう、今日はお母さんとお父さんの命日だ。
ここに来る途中に買ってきた仏花を墓石の両脇に供え、火をつけた線香を刺す。
両手を合わせて目を瞑ると、線香の匂いが鼻をツンとくすぐった。
しばらくして目を開くと、お年寄りの夫婦や子連れの家族などがぼちぼち見え始める。
…まぁ、お盆は過ぎたとはいえこの時期に来る人だって少なくはないだろう。
ふわふわと線香の先から出る薄い色の煙が空へと消えていくのをぼーっと眺めながらも頭に浮かぶのは幼い頃の思い出。
世界を飛び回るような腕の良い執刀医だったお父さんと、総合病院の産婦人科医だったお母さん。
お医者さんの2人は忙しくて、…それこそ新一の家にいる時だって多かったけれど、とても優しくて暖かい家族だった。
時には怒られたことだってあったけれど、賞を取ったら褒めてくれて、沢山可愛がってくれた。
心配性で、親バカで、…優しい両親が私は大好きだった。
『…ちゃんと、しっかり、元気にやってるよ』
セミの鳴き声にかき消されそうな声。
それでも私は、言葉を紡いでいく。
『もう身長もお母さんくらいまで伸びたんだよ、おっきくなったでしょ？』
ふふふ、と小さく笑ったつもりだったのに、その声は嗚咽に変わってしまう。
…今年も、結局我慢できなかった。
『っ、…でもっ、ちゃんと私が大きくなったとこ、2人にも見てもらいたかったな……！！』
───もっと一緒に居たかった。
嗚咽に混じって聞き取れないくらいの言葉だったと思う。
そんな私の声は、誰の耳にも届くことなくセミの鳴き声にかき消されてしまったけれど。
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(名前)ひよ(プロフ) - コメント失礼します。最近占いツクールで主さんの作品を見させてもらっています。質問ですが、うざさ99%の作品でパスワードがかかっていて、作品を見ることができません…。パスワードとはどんなのか教えてくださると嬉しいです！ (2020年11月23日 9時) (
レス) id: 8296576305 (このIDを非表示/違反報告)
す(プロフ) - 遊び人さん» ここだけの話、好きです(小声)隙あらば狙ってます(小声) (2020年8月31日 21時) (レス) id: 3a75016096 (このIDを非表示/違反報告)
遊び人 - 快斗って夢主のこと好きなんですか？？？星が綺麗って言ってたし顔赤くしてたし！！よかったら教えてくださいいぃ！！ (2020年8月31日 20時) (レス) id: 08ebd560d2 (このIDを非表示/違反報告)
Akiko Tanei(プロフ) - 『一部始終しか見ていない』とありますが、『一部始終』とは最初から最後まで・細々としたところまでという意味なので、文章の意味的に『始終』はいらないと思いますよ。 (2020年1月6日 0時) (レス) id: ac2f5c909d (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ(プロフ) - 蓮花さん» 覚えている人がいてくれたなんてびっくりです…！！超嬉しい！！笑 ありがとうございます！！ (2019年6月24日 7時) (レス) id: 9511f3d914 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぴこ。 x他1人 | 作成日時：2019年5月4日 11時
