第八話 ページ9
さっきはあからさまに動揺してしまった。皆にせかされるあまり何も言えずに帰ってしまったけれど、あの敵は一体なんだったんだろうか。後で連絡しておこう。
｢…A？｣
｢え？｣
自分の名を呼ばれ顔を上げると、そこにはトゥルーフォーム姿のオールマイトがいた。
｢や、やぁA、具合が悪そうだがどうしたんだい？｣
｢…｣
｢A？｣
何故、なぜ貴方を見て安心してしまったのかは分からないが、張った糸が緩むように緊張が解け、そこで私の意識は途切れた。
｢私は将来最高のヒーローになって、光ある未来を人々に届けたい！｣
｢ちょうどいい、それじゃあ俺の元で修行するがいい｣
中学二年生の初夏、私はとある事件に巻き込まれた。町中で敵に襲われ、一応人質として捕まっていた。私は驚くほど冷静であり、敵から逃げる方法を一人考えていた。まさか人質に倒されるなんて思ってなかったのか、やってみれば敵は呆気なく捕まった。もちろんヒーロー達にはこっぴどく叱られたが、その後ある一人のヒーローに声をかけられた。
｢お前は何を望み、何になりたい｣
その返事が、冒頭の会話である。ヒーローの彼の名はグラントリノ。私は幼少期に両親が事件に巻き込まれ他界し親戚の家に引き取られていた。事件の後、グラントリノは私を引き取り、そこから私の厳しい修行生活がはじまった。
｢やぁ、君が風間Aかい？｣
ある日のことだった。声がした方に振り返ってみると、黒髪で口元の黒子が特徴的は女性がいた。
｢あなたは…？｣
｢よぉ志村、久しぶりだなぁ｣
｢よ！空彦、相変わらず元気そうでなにより｣
｢グラントリノ、この方は…｣
｢志村菜奈、お前の師となる人だ｣
｢え、ど、どういう…｣
｢あぁ、お前には話さなければいけないことがあるんだ。そうだな、先ずは少し、昔話でもしよう｣
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作者名：霞莎 | 作成日時：2021年1月14日 22時
