【d!】美味しいご飯の為ならば2

噂の人 ページ3

結局観念してひとらんさんに荷物を持ってもらいつつ、幹部棟を進んでいく。
一般棟と違い複雑な作りになっているのは、侵入者対策らしい。

「初めは迷うと思うけど慣れたら大丈夫だよ」
「……慣れますかね」
「慣れるまでは誰かと一緒に行動した方がいいね。近場に誰もいなかったら幹部に声掛けてもいいし…」
「いや、そうなったら自力で頑張るので」

これ以上幹部様のお手を煩わせるわけにはいかない。

「次の角を曲がるとホールがあって、皆そこにいるから…って、あ」

ひとらんさんの声にきょろきょろと装飾品を見ていた視線を前に戻すと、よれたスーツを来た男性が綺麗なメイドさんに話しかけていた。

「それでな？城下町にオシャレなカフェ見つけたんよ。キアラちゃん一緒に行かん？」

にこにこと話す男性に、メイドさんはただただ冷たい視線を送っている。
その手にはモップがあり、動きを止めることは無い。
ナターシャさんに聞いたことがある。
幹部様の中に女性を見ればすぐ声をかけるだらしのない方がいると。

「大ちゃん？何やってんの？」
「…あ、げ、げどちゃん！こんなとこでどないしたん？」

にこりと笑ってはいるものの、ただならぬ殺気を放つひとらんさんがその男性に声をかける。
振り向いた男性はひとらんさんを見ると顔を青くした。

「今日は新しい子が来るから幹部棟のドアのところで待機しててって言ったよね」
「え？それ今日やったっけ？」

なるほど。
私が入れなかったのはこの方のせいか。

(刀の錆になる？)
(すんませんっしたあああああ！！！)

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