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彼女の待ち人が迎えに来たのは、それから1時間が経過した時だった。
エリスと食後の
「首領ッ!ちゅーやですか?」
「あぁ、そうかもしれないね。出迎えてあげなさい」
「はい!」
彼女が途中退席したことで不満そうな顔をするエリスの元には森が、入り口である扉前にはAが向かった。
「エリスちゃん!私が相手をするよ〜ッ」
「リンタロウは嫌ッ!」
そんな三人の耳に、ノックの音が聞こえた。
「首領、中原です」
「入り給え」
許可を出しながら、Aに見えるようにOKサインを出した。
彼女は嬉しそうにコクコク頷きながら、扉が開くのを今か今かと待っている。
「失礼します」
扉が開き、特有の柿色の髪と黒帽子が見えた瞬間。
Aは入ってきた人物に飛びついた。
その人物は少々驚きはしたものの、軽々と彼女の小さな体躯を受け止める。
「ちゅーや!おかえりなさいッ」
「おう。只今、A」
フリフリと勢いよく揺れる尻尾が見えた気がして、中也は笑みを零しながら抱き上げた。
彼女は待ってましたとばかりに、チョーカーがついた首に腕を回す。
「任務ご苦労様、中也君」
「首領。Aを預かって下さり、ありがとうございました」
「いやこちらこそ。エリスちゃんも嬉しそうだったし、Aちゃんも良い子だったよ」
帽子を片手に頭を下げる中也に、森は笑みを返す。
「それにしても、随分君に懐いたねぇ。当時はあんなに警戒していたのに」
「拾った時の状況を鑑みれば仕方のない事でしたが、良かったです」
中也の首に抱きつく彼女。
自身の描いた絵を具現化させる能力。
そんな汎用性の高い、見方によっては強力な異能を持つAは彼に出会うまで、とある組織に囚われていた。
紙とペン、見本を与えられ、ただひたすら絵を描き続ける事しか許されなかった。
しかしある日、その組織を殲滅しに来ていた中也に拾われた。
幼いながら警戒心が強く、全くと言っていい程言葉を発しなかった彼女がここまで懐いたのだ。
勇気を出して一歩踏み出したAと、根気よく傍に居続けた中也の努力の賜物だろう。
「ちゅーや、ケガはない?包帯いる?」
「傷一つ無ェから大丈夫だ。それより、晩飯は何がいい?」
「んーと…ハンバーグ食べたい」
「了ォ解」
〇
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雪見だいふく - このシリーズ大好きなので、続編書いて欲しいです!リクもさせていただきたいので、よろしくお願いします! (2021年10月22日 18時) (レス) id: 0b9e52d702 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 続編をお願いします! (2021年10月21日 22時) (レス) @page49 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - すみませんゴーゴリのヤンデレは…… (2021年10月5日 1時) (レス) @page45 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 上手だと思いますよ、棒人間しか書けない私にとっては羨ましいです。 (2021年8月26日 1時) (レス) id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - フョードルの制裁論お願いします (2021年8月22日 7時) (レス) id: 68ec6172c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2021年2月22日 21時