目覚め、そして。* ページ49
最後のロスタイム、延長線か決着か。
「最後の1秒まで全力で戦う!」
「それが俺達のサッカーだ!」
円堂くんがゴールから駆け上がり、不死鳥が飛び立った。その先には修也くんがいた。
不死鳥の火は更に過熱して、世宇子中のキーパーは恐れをなしてボールから逃げてしまった。
試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
「勝ったのは雷門だー!!劇的な大逆転!!」
実況の声が響き渡る。
「やったー!!!!」
皆が円堂くんの元へ集まり、飛んだり跳ねたり。
木野さんと音無さんも手を繋いで喜んで。やった、ついに。ついに優勝したんだ。
「君をここまで連れてくる約束…果たせなかったね、というかその約束も、俺達の事も忘れていれば関係ないか。でも、それももうどうだっていいね……さあ、始めようか」
.
「俺達は日本一だー!」
円堂くんがトロフィーを掲げて。皆で輪になって喜ぶ。
歓喜のあまり泣き出した壁山くんと栗松くん、トロフィーを触りたがって大喜びの宍戸くん達。
「豪炎寺、早く病院に行ってやれよ。早く夕香ちゃんに報告しなきゃ」
円堂くんウィンク出来たんだ。修也くんも嬉しそうに返事をして。
不意に、円堂くんが修也くんに手を差し出した。
「ありがとな、豪炎寺」
「……ありがとう、円堂」
2人が握手をした。
夕香ちゃんと修也くんの邪魔しちゃ悪いよね、木野さん達に続いてキャラバンへ向かおうとすれば修也くんが突然、鞄の紐を掴む。
「夕香のところ行かないのか」
え。2人きりの方がいいんじゃないの?
既に乗り込み始めてる円堂くんを見れば、一緒にいってやれ!と。
修也くんもそれを望むなら…、
「うん!」
途中でお花を1輪だけ買って、急ぎ足で病室まで。
扉を開けて、閉ざされた瞳を見て
「勝ったよ…」
そっと、窓を開ければ風がカーテンを揺らした。
修也くんが荷物を下ろして花瓶に触れた時だった。
「おにい……ちゃん……」
とても、小さな声。
聞き間違いじゃないか疑うような、それでも確かに。
振り向けば、修也くんの方をしっかりと見詰める夕香ちゃんの姿が。
「お兄ちゃん……」
今度は、はっきり。
花瓶を落して、駆け寄った修也くんの手は少し震えて、優しく夕香ちゃんの頭を撫でた。
涙を浮かべた2人に、私も涙が頬を伝う。
「夕香……お兄ちゃん、勝ったよ」
あの日の約束。
修也くんと夕香ちゃんを2人にして、病室を出れば最近買ってもらったばかりの携帯が鳴った。
「秋からメール?」
え、そんな…?
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作者名:楸 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisagi/
作成日時:2022年8月3日 21時