目を逸らさない。 ページ47
「なに、これ……」
ベンチへ急いで向かえば、目金くんが横になっていた。皆酷い怪我をおっていて、グランドを見れば10人しかいない。
「Aさん……」
「何をしたらこんな事になるの」
「ダッシュストーム」
みんなが突き飛ばされては、落ちて。
ボールをぶつけられて。
傷が増える一方で、でも、誰も諦めなくて。
何度も、何度も立ち上がり続けて。
「これが……世宇子の力」
僅か数分で奪われた3点。
誰も立ち上がらなくて。円堂くんも、立ち上がれなくて。
でも、不思議と怖くなかった。大丈夫って、心から思えた。
心配そうな木野さんの手を取って、笑う。
「大丈夫だよ」
「何を迷ってる円堂!俺は戦う……そう誓ったんだ」
だってフィールドには修也くんがいる。だって、雷門のサッカーは最後まで諦めないことだから。
皆が円堂くんを呼ぶ、皆も力を鼓舞して立ち上がる。
「豪炎寺の言う通りだ。まさか、俺達のためだと思ってたとしたら大間違いだ」
「最後まで諦めないことを教えてくれたのはお前だろう」
鬼道さんも起きて、一之瀬くんも起きて。
それでも、世宇子の圧倒的な力に皆は一方的に攻撃される。
「これ以上見てられません…」
震えた音無さんに、木野さんと雷門さんはみんなから目を絶対に背けない。
「だめよ、目を逸らしちゃ」
「でも!」
「みんな必死に戦っているんだから、私達もその戦いから逃げちゃいけないわ」
木野さんと雷門さんの言葉に音無さんは震えながらみんなへもう一度目を向けた。私も、みんなを見つめた。
円堂くんが立ち上がれば、不意に髪の毛の綺麗な人はボールを外へ。
水分補給……?
「あれ、変じゃない?」
雷門さんに言われて、世宇子の人を見た。確かに、皆が同時に水分補給してる。
「ええ。いくらリードしてるからって許せません!」
「じゃなくて。全員同時にってこと」
雷門さんが言えば木野さんが確かに、と言葉を漏らした。
「試合中の水分補給は大事だけど、試合の途中に全員がベンチへ戻ってだなんて、みたことない」
「2人とも着いてきて」
雷門さんに声をかけられて、木野さんと音無さんは慌てて後を追いかけて行った。2人……。ちらり、とベンチに座る響木さんを見れば目をそらされた。どうして……。
「大人しく座ってろ」
「へい」
響木さんの隣に座り、試合をじっと見守り続けた。
「木野さん達大丈夫かなあ」
「心配なら追いかければよかったじゃないか」
「……へへ」
わかってて言うんですね、響木さん
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作者名:楸 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisagi/
作成日時:2022年8月3日 21時