名前。 ページ42
「決勝戦前に事故を起こして、試合に出させないようにするのは影山の手だ」
半田くん、頭良かったんだ……。思わず口を抑えてしまう。
あ、いえお化けじゃないから安心しただけです。
「よーし、行くぞみんなあ!そいつを捕まえて正体を暴くんだ!」
「おー!!」
「え、ちょ、校舎に入るの?!」
思わず手を離したけど、周りの静けさの方が怖い。
「夏未さんは火お願い!」
「わ、わかったわ!」
「……夏未さん、一緒に火見てようね」
そそそ、と夏未さんの隣に並べば貴方ね……と少し呆れたご様子。
「だってほら、お化けじゃないのは明白だし。それに影山さんの何か、っていうわけでも無さそうだから」
「え?どうしてそう思うの?」
夏未さんとカレーの火を見ながら、ゆっくりとお玉で混ぜれば響木さんがちらりとこちらを見てきた。カレーなら大丈夫、焦がしませんよ。
「だって、響木さんも誰も慌てないから」
「あら。確かに。意外と冷静に周り見れるのね」
「そうでもないよ、今回は人間よりもお化けが怖くてわかっ……忘れて」
顔に、熱が集中して行くのがわかった。
「ふふ、Aさんてお化けが怖いのね。可愛い所あるじゃない」
「名前……」
名前。雷門さんを見れば、釣られたように頬が染まっていく。
「貴方だけよ、名前で呼ばないのなんて」
「あはっ、そうだよね」
火を消して皆を待っていればOBの人達と一緒に戻ってきた。
「やっぱりお化けじゃなかった/やっぱりお前らだったのか」
「え?」
響木さんと声が被ったけど、大丈夫小さな声だったし聞こえて……。
「ちょっと、肩が揺れてるから修也くん。笑うなら笑って」
「ふ、すま……っ」
「もう!」
カレーを食べ終えると、OBの皆さんが用意してくれた「あれ」を見せてもらうことになり修練場へ向かう。
少し前を歩いてる修也くんに駆け寄るのも、怖いですって主張しているようで。並んで歩いてた木野さんの袖を掴ませて貰う。
「Aさんは怖がりなのね」
「木野さんは平気なの?」
「うん。皆もいるから」
や、居ても居なくても出る時はお化けも出る。
「じゃあ!私がこっちの手繋いであげますよう」
「わ、音無さん」
左手に抱きついてきた音無さん。それなら、と木野さんは少し前を歩いていた雷門さんの手を取って、4人で手を繋ぐ形になった。
なんだこれ。
「あら、怖がりなAさんの為?」
「わ!夏未さんずるいです!私も名前で呼んでいいですか?」
「好きに呼んでいいよ」
「やったー!」
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作者名:楸 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisagi/
作成日時:2022年8月3日 21時