絶対に悪くない。 ページ35
「豪炎寺……」「修也くん……」
胸からスパイクの形をしたペンダントを取り出した修也くん。握りしめる手に、表情は怒りを帯びて…。
「許せない。どんな理由があってもサッカーを汚していいわけがない!間違ってる……!」
円堂くんの言葉に皆が頷いて、鬼道さんが影山さんが今どこにいるかを聞けば、まだわからないと。
「プロジェクトZと空……なんの事だ」
「帝国にいたお前には空と聞いてなにか思いつくことはないか?」
鬼瓦さんに聞かれた鬼道さんは、思考しながらも俺にはさっぱりと答えるしか無さそうだった。
「また明日ね」
雷雷軒を出て、それぞれ家へ帰っていく。
ペンダントを見つめながら歩く修也くん……。
「修也くん、それ」
「ああ、あの日夕香がくれたんだ。お守りにって」
「そうだったんだ」
悔しそうな修也くんを見詰めれば、ぽつりぽつりと話し始めた。
「まさか、夕香の事故に影山が関わっているだなんて」
「思わなかった?」
「……ただの事故だと」
そうまでして、勝ちたかったのか。
修也くんがそう苦しそうにするから、私は、どうしたらいいかなんて分からなくなる。
「修也くんは絶対悪くない」
「木戸川との試合の前にも……言って……。A、まさか」
立ち止まった修也くん。私も立ち止まり、振り返って修也くんを見た。
あ、いえ。私は何も知りません。
「鬼瓦さんにお願いしたの。夕香ちゃんの事故のこと調べて欲しいって」
結構前だよ、と言えば修也くんはどうして、と眉を下げるから。
「最初に影山さんって人が勝つ為に手段を選ばないって聞いた時……嫌な予感がしてね」
修也くんの手を引いて歩き出せば、修也くんも歩いてくれた。
とにかく、修也くんの力になりたくて、もし、もしも。
その影山さんだったら、修也くんが試合に出て、帝国学園が負けるようなことがあったらどうするだろう、って考えた時。
いやでも、夕香ちゃんの事故に行き届いてしまったこと。
現に、修也くんは帝国学園のゴールを破って雷門を勝利へ導いている。
繋いでいた手に力がこもり、修也くんを見れば、ずっと眉間に皺を寄せていた。
「修也くんは、絶対に悪くない」
「……A、」
「だから、ね。そんなに怖い顔しないで……今は世宇子中に勝つことだけ考えよう?」
困ったように笑いかければ、修也くんも同じように笑って。
「じゃ、またな」
「うん、おやすみ。気をつけてね」
軽く手を振る後ろ姿を見守ってから、玄関をあけた。
「ただいまー」
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作者名:楸 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisagi/
作成日時:2022年8月3日 21時