勝利のブレイク。 ページ15
先制点を取られたまま、前半は終了。
ゴーグルさんからの指示で染岡くん1人のワントップで攻める事に、修也くんを見ると表情ひとつ変わらなくて。
「俺たちのサッカーじゃない!俺たちのサッカーは豪炎寺と染岡の2トップだ」
半田くんが、そう、思いを言葉にすればゴーグルさんは冷たく、厳しい言葉で否定する。お遊びじゃない。全国レベルのプレイヤーである雷門。
円堂くんがとりあえずやってみよう、というと半田くんも不満げにわかったと言うしかなくて。
思わず、半田くんのユニフォームを引っ張って…。
「えっ、A?!」
「大丈夫。もっと、もっと大事な雷門のサッカーがあるよ」
「…あぁ、」
みんなに遅れてフィールドへ駆け出していく半田くん。
雷門のサッカー…かあ。なんだろう、雷門のサッカーって。そう思いながらベンチへ戻り木野さんの隣に座る。
祈るように、願うように。
試合をじっと見つめて。思うように攻めきれないことへ皆が徐々に疲弊していくのがわかって。
残り数分。円堂くんも上がってきて、総攻撃になった。
諦めた表情の皆に気付いた円堂くんが皆を鼓舞する。
「諦めないことが俺たちのサッカーだ!」
その言葉に、胸がじんとあったかくなる。
「諦めない…」
「そうだね。ずっと、皆が諦めなかったから今があるもんね。円堂くんの言う通りね」
冷えてきた指先に気付かれていたようで、木野さんがそっと手を繋いでくれた。大丈夫だよ、と優しく微笑んでくれて、皆も絶対勝てるよ。と慈愛に溢れた笑顔…。
「今木野さんがすっごく聖母様に見える。女神様かな」
「え?!ちょっと、恥ずかしいじゃないっ」
「鬼道!!!」
突然円堂くんの声が響き渡り、空へ蹴りあげられたボールを囲んで、ゴーグルさん、円堂くん、修也くんの3人の必殺技が。
染岡くんのゴリ押しで最後の一点をもぎ取り、逆転勝利を収めた。
ベンチへ戻ってくる皆を1番に宍戸くんが迎えて、勝利への喜びをみんなと共有して。
.
修也くんが帰ろうとするゴーグルさんを引き止める。
え?ちょっと?不思議そうに見つめて、何となく今日は一緒に帰らないんだと察して鞄を下げて。
うん。ちょっぴり寂しい。
新しく入った人に、修也くんの隣取られるなんて思わなかった。
わいわいと同じ道へ進んでいた染岡くんたちに声をかけようと駆け寄ろうとした瞬間
「きゃ?!」
「あ、すまん」
鞄の紐を引き寄せられてバランスを崩して修也くんへ凭れかかる。
「まず先に声をかけて!」
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作者名:楸 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisagi/
作成日時:2022年8月3日 21時